大学共通テストで「挙」を「拳」と誤植発覚  約36年前にはタイトルで「拳」を「挙」とした漫画があった!

「挙」と「拳」の誤植もあり高値で取引されているホラーハウス12月号増刊「ファミコミック」1986年 No.1(大陸書房)


 2023年1月14日に実施された大学共通テストの「世界史B」の問題で、とんでもない誤植が見つかってしまった。科挙の「挙」を「拳」の字にしてしまい、「科拳」と印刷してしまったのだ。「科拳」、何かの技のようである。

 ニュースには「日本版の科挙である大学共通テストでこんなミスがあるなんて」など、様々なコメントが寄せられているが、「挙」を「拳」と誤植するのは非常によくあるミスなのだ。パソコンでタイピングする現代になって減少したが、文字通り、写植で文章を組んでいた時代は頻繁に起こっていた誤植である。

  さて、今回とは逆の「拳」を「挙」と誤植してしまった漫画が存在することをご存じだろうか。1986年12月刊行の伝説の漫画雑誌「ファミコミック」に掲載された安田タツ夫の漫画『最強拳士伝説 ファミコマンドー竜』である。あろうことか、見開きのタイトルで『最強“挙”士伝説 ファミコマンドー竜』と、誤植しているのだ。「挙」と「拳」の間違いが約36年前にも起こっていたことを示す、貴重な記録である。

 しかも、この漫画は内容も何かとネタにされやすい漫画なのだ。知っている人は知っているかもしれないが、テレビ番組『トリビアの泉』でも紹介された「ファミコンを武器に戦う漫画」である。ファミコンが武器と聞くと、格闘ゲームでもやって戦う漫画なんだろうと想像する人が大半かもしれないが、甘い!

 199X年、核戦争が勃発したことで人類が存亡の危機に陥っていた――という世界観は、まんま当時流行っていた『北斗の拳』なのだが、この世界はなんと、ファミコンゲームの腕前で身分が決まるというとんでもない身分制度が存在していたのである。楽しむためのものであるはずのファミコンで、人々が虐げられている。そんな意味不明な圧政から人々を救うために立ち上がったのが、主人公のファミコマンド竜(なぜか“ファミコマンドー”ではなく“ファミコマンド”である点も突っ込みどころだ)である。

 竜のキャラクターデザインも実に素晴らしい。見た目がまんまケンシロウ……などと野暮なことを言ってはいけない。革ジャンをまとい、ファミコンが肩からぶら下がっており、カセットをベルトのように巻き付けるという極めて斬新なファッションセンスの持ち主なのだ。

 そして、竜はファミコンを武器に敵を倒すのだが、その倒し方がゲームで対戦する……のではなく、なんとファミコンの本体をぶん投げて爆発させるという、無茶苦茶な戦いっぷりなのだ(ちなみにこの技は「爆裂ファミコン」という)。1話完結の読み切りだが、竜がファミコンで対戦する場面がまったく出てこない。異色の漫画である。

 さて、『最強拳士伝説 ファミコマンドー竜』は一部でマニアックな人気を誇っているものの、残念な点は単行本化されていないことである。しかも、漫画雑誌「ファミコミック」は3号で休刊になっており、プレミア化している。漫画の作者・安田タツ夫は画力も高く、純粋に楽しめる漫画なので、入手困難なのは惜しい。ぜひ、この機会にどこかの出版社が単行本にまとめてくれないだろうかと、願ってやまないのだが……

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