【漫画】深夜に友人の居場所を調べてみたら……位置情報アプリの怪談が怖すぎる
――本作に多くの反響が集まっていますが、これを受けていかがですか。
景山五月(以下、景山):私的には「梨さんの話、面白いでしょ!」という気持ちで描いていますので、当然かなと(笑)。今回の原作を読んだ時に編集者さんと「現代怪談だ」と盛り上がりました。
梨:怪談のジャンルとしては「心霊」と「ヒトコワ」があるのですが、位置情報アプリはどちらとも言えるところが面白いですよね。この話は実際に取材したのですが、漫画のディテールも聞いた話を活かしているので、そんな手触り感もウケた理由かなと。あと明治時代から佐々木喜善「迷い家」など、山の奥にあるはずのない家で幸運を授かるという伝承もあるんです。
――取材した内容を脚色したりも?
梨:証言者から「そのまま書かないでほしい」と言われることもあるので、詳細は変えてしまうことも多いです。その点でいうと本作はあまり脚色はしていませんが、さすがに地名はぼかしていたのに景山さんが、現場に似た情景を描いていて驚きました(笑)。
景山:それは怖い(笑)。毎回、文字で原作をいただいて、漫画として起こしていくスタイルですが、今回はニュータウンの画像をたくさん調べた気がします。
――景山さんの漫画「黒猫の○○ごっこ」は可愛い絵柄とストーリーだったので、「コワい話は≠くだけで。」はギャップがありますよね。
景山:本来ほのぼの系の漫画家なんです(笑)。本格ホラーは描いたことがなかったので、自分も描けるんだなと発見でした。でも漫画家の役割って作品の雰囲気やテンポ感、コマ割をコントロールしているだけなので、やっていることは変わらないと思ってます。ここは読ませる/分かりやすくする、という普通の制作意識で。
――原作的には「怖さ」をどう見せようとしていますか。
梨:私の主戦場は小説なんですよ。なので、画に起こす前提のホラー作品は作ったことがなくて。ビジュアルとしての「怖さ」を意識したのは、景山さんと仕事をしてからです。例えば、彼女の絵柄になった時に「真っ暗な部屋に遺影があったら怖いだろうな」とか。あと今の時代にやるなら、今回の位置情報アプリとかのツールにも幽霊はいてほしいなとも考えています。
――これだけ科学が発達した時代に、なぜ「怖い話」はなくならないのでしょう。
梨:この現代にも不思議なことが起こりうる、ことが救いなのかもしれません。「分からないことがある」ことで楽しくなるのかなと。個人的には幽霊が存在したら、ワクワクするので。
景山:今はテレビの恐怖番組が少なくなったり、「狐に化かされた」類の話も、みんな信じなくなりました。でも「何かを信じる」という心の動きは興味深いし、心に余白を持って「化かされたなら仕方ない」と思うことは誰かに責任を問うよりも豊かな感じがします。ただ私は個人的にホラーは苦手です(笑)。
――原作と作画が分業であることの魅力は?
梨:私は景山さんの絵柄のファンでもあるので、「Skeb」(クリエイターに有償で制作依頼をするサービス)だと思ってやっている部分もあります。
景山:自分ひとりじゃ書けない画が出てくるので、チャレンジする機会が増えました。あとはチームでしか作れないものもあるなと。
――今後の「コワい話は≠くだけで。」はどのように展開していくでしょう。
梨:もっと「マンガだからこそ」の表現がホラー文脈で出来るはずなので、今あるアイデアを提案していきたいです。現在公開されている10話以降と、続いていくことによって何かおかしなことが起こるかもしれないので期待していただければ。
景山:漫画かつフェイクドキュメンタリーの形を取っている作品で、どこまで表現できるかは追求したいですね。同じスタイルだと変化がないので、なるべく梨さんの提示する新しさに私の新しさで応答できたらと思っています。





















