大ヒット電子コミック『きみを愛する気はない』三沢ケイ  会社員とのダブルワークで400万DL達成! ヒット原作の背景に迫る

――「きみ愛」は、BookLiveが培ってきたマーケティング部のさまざまな分析データを基に企画が作られた経緯があります。これまでの三沢さんの作品のように、一からプロットやキャラクターを創作されるのではなく、ある程度物語の枠組みがある中で、お書きになったんですよね。はじめはどのような印象を持ちましたか?

三沢:おもしろいなと思いました。私の場合、(ファンの方はお察しの通りかもしれませんが)二次元だと軍人系ヒーローが好き(笑)。誰かに指摘してもらわないと似たような作品になりがちです。違うアイデアを、外側からもらえるのは、楽しいんです。「きみ愛」の時は、いま電子コミックで人気の「溺愛」をテーマにした漫画原作を考えて欲しいといくつかの要望をいただき、それらを反映させた設定案を4つ作って担当編集者の方に提出しました。そのうちの1つが採用され、「きみ愛」が生まれました。

 また、シナリオを作る過程でも「この辺でヒロインに見えないように照れるヒーローの照れ顔を」とか「あまり落ち込ませずに早期にほんわか展開に持っていくように」といったマーケティングに基づいた詳細なフィードバックをもらうことが多々あるので、それを反映させて書き直しをしています。自分では気づかなかった指摘をいただくことも多いので、とても勉強になっています。

――小説と漫画原作のコミカライズでは、書き方など何か意識されていることはありますか。

三沢:私の場合、小説は一冊10万字を目安にして、そのなかで起承転結をつけて最後まで書くといったように“小説”の形式を意識しています。漫画原作の場合は、大きいストーリーを最初に作るのは一緒なのですが、全10話だとしたら、1話ごとに小さなオチをつけるなどより短い単位で起承転結を意識して書いているところが違うと思います。あと、漫画原作を書くときは〝そのシーンを絵にしたときに映えるか〟を意識するようにしています。

――なるほど、漫画原作だと1話ごとに飽きないように工夫をされているのですね。読者に対して意識していることは?

三沢:読者の視点を忘れてしまうと、作り手の独りよがりになってしまいます。なので一般読者の視点を失わないようにしています。初心を忘れないというか、読者を喜ばせようというサービス精神ですね。

 実は私、作品のレビューや反応はいつも見ているんです。良い反応も悪い反応も全部目を通して、軌道修正しているところがあります。レビューには、「超王道」って書かれることが多くて、以前それがコンプレックスでした。でも、前にある編集さんから「読者さんを飽きさせずに超王道を書き続けられる作家って、実は少ないんですよ」と言われたことで、今はそれが自分の作風の持ち味だと前向きに捉えることができています。データって、マーケティングやビジネスライクに捉えがちですが、大切なのは、読者の心に響く作品を作ることです。

――作品が埋没しないように、アイデアを搾り出して人と違ったことをやらなくちゃと執筆されている方は多いと思います。そのなかで、王道と言われるような定番の物語を読ませることができる力というのはすごいです。

三沢:王道というのは、それだけ過去から多くの人達が好んだ展開ということだと思うんです。なので、私の場合はそこにいままで“なかった設定”を入れて自分らしさを出すように意識しています。読んだ方の反応っていつも正しいと思っているんです。だから作品を読んで、面白いって反応してくれるのはとても嬉しいですね。

――現在フレックスコミックスとBookLive、物語の創作をサポートする執筆ツール「Nola(ノラ)」を提供するindentが共同主催の「フレックスコミックス 漫画原作大賞」が募集を行っています。応募要項では、未完結作品の状態でも応募OKとあります。現在会社員の方でもチャレンジしやすいアワードという印象がありますか。

三沢:はい、ダブルワークを今後されたい方や現在作品を書き進めている方でもチャレンジしやすいと思います。ただ未完結でも物語のゴールや主人公の行動の目的は決めておいた方が良いのではないでしょうか。どんな作品でも、ゴールや目的が明確ではないと作品の方向性がブレてしまうので。

――今回の「フレックスコミックス 漫画原作大賞」の応募では、①女性向け異世界部門と②女性向け明治・大正ロマン作品部門の二つがテーマとして決まっています。シチュエーション、年代、なんとなく世界観は決まっている状況の中で、三沢さんだったらどんなところから考えますか? 

三沢:まずは「キャラ」、そして「シーン」です。漫画のよさはなんといっても絵でストーリーを読むことなので、まずは一番見たいシーンを思い浮かべます。そして、それに合うキャラ像を作り込んでゆきます。

 昔、「キャラを作る際は、その作品に載っていない状況に彼らが置かれたときにどういう行動をとるのか、それを即答できるくらい、深く考えなさい」と編集さんから教わったことがあるんです。

 「きみ愛」ではキャラ表の下に「このキャラがもしこんなことがあったら」といったことを一覧としてまとめていて、担当編集者さん、漫画家さんと三人で共有しています。たとえば「きみ愛」に出てくるエルサやユリウスが音楽コンクールに出ることになったら、それぞれどんな行動をとるか……とか。緻密に作りこまれている物語って二次創作もたくさんありますけど、それはキャラがしっかりしているから成り立つことなんだと思っています。

――原作に挑戦してみようかなという人は、まずはキャラクターをしっかり詰めていく、ということがとても大切なんですね。

三沢:キャラクターを作りこむと、どういった物語に仕上げていけばいいかというゴールのイメージもしやすくなるんです。自分のキャラクターにどれだけ愛を持てるか、というのはすごく大切。ラストまでイメージをもつことは、作品の完成度を高める上でも必要だと思います。

――最後に「漫画原作大賞」に、これから応募される方々へメッセージをお願いします。

三沢:「自分が愛を持つキャラクターのさまざまな物語が読みたい」という想いをかたちにしてもらえればいいと思います。最終的には自分が熱中できることが大切だと思うんです。あとは、まずはやってみようと思うこと。好きなこと、表現したいことをかたちにすること。まずは試してみようと。皆さんの中にある物語は、私自身とても興味がありますし、読んでみたいと思いますので、ぜひ応募してみてはどうでしょうか。

■「フレックスコミックス 漫画原作大賞」大募集中

募集期間:~ 2023年1月31日(火)
募集部門:① 女性向け異世界部門、② 女性向け明治・大正ロマン作品部門
結果発表:2023年3月某日
https://contest.nola-novel.com/flexcomix2022
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■フレックスコミックス編集部からのメッセージ

 2023年1月31日と締め切りが迫っておりますが「フレックスコミックス原作大賞」では、皆様の応募作品をお待ちしております。

 3話まで=1万字前後のシナリオと、あらすじ、キャラクター設定があれば応募できる「原作賞」ですので、ぜひトライしてみてください。皆様の“キャラクター愛”が感じられる作品を楽しみにしております。

 受賞後は作品作りに向けて、フレックスコミックスで担当編集がつき、BookLiveのマーケティング部が一緒に作品制作をサポートしていきます。

 皆様の愛を込めた大事な作品をマンガ家さんの手によって動かし、読者さんへ届け、世界へと広げていきますので、ご応募よろしくお願いいたします。
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■三沢ケイ(みさわ・けい)プロフィール


作家/漫画原作者。会社員の傍ら、恋愛やヒューマンドラマ小説を中心に執筆活動を行う。現在、原作担当コミック5シリーズ(『辺境の獅子は瑠璃色のバラを溺愛する』『「きみを愛する気はない」と言った次期公爵様がなぜか溺愛してきます』『…竜王陛下のもふもふお世話係~転生した平凡女子に溺愛フラグが立ちました~』『転生聖女の異世界スローライフ ~奇跡の花を育てたら、魔法騎士に溺愛されました~』『この婚約は偽装です! 名家の令嬢は敏腕社長に迫られる』)が好評連載中。

■『「きみを愛する気はない」と言った次期公爵様がなぜか溺愛してきます』あらすじ

©水埜なつ ©三沢ケイ/フレックスコミックス

こじらせ次期公爵×前向き没落令嬢の焦れキュンラブストーリー。没落貴族の令嬢・エルサのもとに、超エリート貴族・ユリウスからの求婚の知らせが舞い込んできた。「そんなご立派な方がなぜ私と?」不思議に思いつつ結婚を決めたものの、挙式後、それまで優しく穏やかだったユリウスが豹変!「今後、きみを愛するつもりは一切ない」と冷たい声で告げてきて――!?
https://booklive.jp/product/index/title_id/20030734/vol_no/001

■三沢ケイさん原作の新作『この婚約は偽装です! 名家の令嬢は敏腕社長に迫られる』が電子版、紙単行本ともに好評発売中

©鮭田ねね ©三沢ケイ/フレックスコミックス

あらすじ:私との婚約を破棄してください――! 初対面の婚約者・涼真に突然そう切り出した令嬢・香子。「家から離れて自立したい」「本当の恋をしてみたい」そう願う彼女にとって、親の決めた相手との結婚は堪えがたいものだった。だけど涼真の答えは「なら俺と偽装婚約しないか?」という意外なもので…!? イケメン社長×令嬢の溺愛&セレブ同棲ストーリー。
https://booklive.jp/product/index/title_id/20045744/vol_no/001

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