『わたしはあなたの涙になりたい』から『リコリス・リコイル』まで……2022年のライトノベル、次代を担う作品まとめ

2022年ラノベ注目作を総括

 ノベライズからも幾つか。『電脳コイル』の磯光雄監督が15年ぶりに手掛けたアニメーション作品『地球外少年少女』を『魔女と猟犬』(ガガガ文庫)のカミツキレイニーがノベライズした『地球外少年少女~地球外からの使者~(前編)』『地球外少年少女~はじまりの物語~(後編)』(ガガガ文庫)は、月と地球でそれぞれ生まれ育った少年少女が宇宙ステーションを訪れていた時に事故が起こるという展開から、AIの進化であり宇宙時代に適応した人類の姿といったものが示される。

 発売前から増刷に次ぐ増刷で話題になったのが、TVアニメ『リコリス・リコイル』でストーリー原案を手掛けたアサウラによるノベライズ『リコリス・リコイル Ordinary Days』(電撃文庫)。日本の治安を秘密裏に守っている少女ばかりの暗殺者集団「リコリス」という組織があり、そこのエースだった錦木千束と任務でミスをした井ノ上たきながバディを組み、テロに挑むという設定で目を引いた。ノベライズの方はそんな激務の合間を縫って、2人が喫茶リコリコで送る日常を描いた。アニメロスも続く中、読んで次を待ちたい。

 ライトノベル出身で活躍の場を広げている、冲方丁や桜庭一樹といった作家に続くような"越境組"からも1人。『賭博師は眠らない』(電撃文庫)で第23回電撃小説大賞の金賞を獲得した周藤蓮が早川書房から刊行した『バイオスフィア不動産』(ハヤカワ文庫JA)は、人類がいったん中に入れば外に出ないで一生を送れるバイオスフィア型住宅に入ってしまった世界で、外にいて管理を請け負う閉所恐怖症の少年アレイとサイボーグのユキオが経験するエピソードが綴られる。夢のような暮らしなのに起こる不満や嫌悪もある中で、人類はどのようになっていくのかを見せてくれるSFだ。

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