ライトノベル、2022年のキーワードは「涙恋」 Snow Man 目黒蓮の主演映画化で注目の作品も
「ハーレム」「異世界」「悪役令嬢」「溺愛」など、ライトノベルにはその時々で流行するテーマやキーワードがある。2022年は『ようこそ実力至上主義の教室へ』や『りゅうおうのおしごと!』、『本好きの下克上』といった人気作のセールスが絶好調な中、『時々ボソッとロシア語でデレる隣のアーリャさん』なども多いにファンを増やしていたが、新たな潮流としてはどんなキーワードが浮かび上がってきたのだろうか。
ライトノベルに詳しい書評家のタニグチリウイチ氏に、注目すべきキーワードを聞いた。
「2022年のライトノベルはラブコメ、SF、ミステリー、ファンタジーなど、幅広いジャンルでそれぞれに秀逸なヒット作がありました。それゆえ、ライトノベル全体を通して明確に『これだ』と言えるトレンドは挙げにくい状況ですが、話題となった作品から人気のエッセンスを抽出したときに、ひとつ挙げられるとすると『涙恋』というキーワードが浮かび上がってくるのではないかと思います」「涙恋」は、「涙が流れるような恋」といった意味で、悲しい涙もあれば嬉しい涙もあり、とにかく読むものの心を大きく揺さぶるような作風だという。実際、どんな作品が挙げられるのだろうか。
「ひとつは『このライトノベルがすごい!2023』で総合新作部門の1位となった四季大賀さんの『わたしはあなたの涙になりたい』(ガガガ文庫)です。いわゆる難病ものの範囲にあたる作品ですが、ただ離別の悲しさで泣かせるのではなく、困難を突破していく強さへの感嘆の涙もあって、悲劇の向こう側へと連れて行ってくれる優しさが感じられます」
映画化されて話題となった「涙恋」作品もある。
「なにわ男子の道枝俊輔さんと東宝シンデレラの福本莉子さんを主演にして実写映画になった一条岬さんの『今夜、世界からこの恋が消えても』(メディアワークス文庫)も、映画の公開に合わせてランキングに顔を出すようになりました。翌日に記憶を持ち越せない少女と付き合うことになった少年の優しさにあふれた姿にグッときた後に起こる、ある出来事がとにかく泣けます。自分は犠牲になってもいいから誰かの幸せを願うその優しさにグッとくるのは当然として、映画ではそうした自己犠牲にある意味で荷担してしまうことの苦しさが表現されていて、心が揺さぶられました。映画化といえば、八目迷さんの『夏へのトンネル、さよならの出口』(ガガガ文庫)もアニメーション映画化されました。こちらは大きく隔たってしまった時間を乗り越えてでも、再会したいと願う少年と少女の気持ちに泣かされました。恋のためならどれだけでも待っていられるか。そんな問いかけをもらえる作品になっています」
Snow Manの目黒蓮による実写化映画が期待される作品も注目だという。