大空翼&岬太郎だけじゃない! 三苫薫と田中碧を彷彿とさせるサッカー漫画の“幼馴染”たち

サッカー漫画の“幼馴染”プレイヤーたち

 サッカーW杯カタール大会、日本代表の決勝トーナメント進出がかかったスペイン戦で、ラインを割りつつあるボールに食らいつき、超絶アシストを見せた三笘薫と、ボールが折り返されると信じて走り込み、勝利を決定づけるゴールを決めた田中碧。神奈川県川崎市のサッカークラブ・さぎぬまSCで切磋琢磨し、小学校・中学校も共に過ごした幼馴染で、互いに日本代表の中心メンバーとなり、W杯という舞台で優勝候補のスペイン代表を破った二人が、『キャプテン翼』(高橋陽一)の大空翼&岬太郎のコンビを彷彿とさせると話題だ。

 サッカー漫画の“幼馴染コンビ”として思い起こされるのは、翼&岬のゴールデンコンビだけではない。例えば、Jリーグ開幕を翌年に控えた1992年から、日本代表がW杯に初出場した1998年まで「週刊少年サンデー」で連載された名作『俺たちのフィールド』(村枝賢一)。主人公・高杉和也と騎場拓馬のコンビは、小学5年生のころ拓馬が転校してくる形で出会い、ともに日本代表としてW杯に出場する。

 未読の方は日本サッカーの夜明けを感じる本作をぜひチェックしていただきたいところだが、日本リーグのスター選手だった父を交通事故で失う和也と、母親のいない家庭で育った拓馬は、境遇もキャラクターも対照的だ。心身の強さを生かしたダイナミックなプレイでチームを引っ張る和也と、超絶テクニシャンで、後にワンタッチゴールを決める得点力も獲得する拓馬。ふたりは大空翼&岬太郎のような“仲のいい親友”というより、お互いを意識し合う良きライバルという要素が大きく、言いたいことを言い合う熱い関係だ。

 ちなみにW杯終了後、和也はイタリアのフィオレンティーナ、拓馬はスペインのアトレティコ・マドリードに移籍し、中心選手として活躍する。98年からセリエAで活躍した中田英寿に重なるエピソードだが、「日本人選手が海外でバリバリ活躍する」という時代ではなく、いま読み返すと「時代が追いついた」と思えて感慨深い。

 こちらはトリオだが、青春漫画としても評価が高い『シュート!』の「掛西中トリオ」=田中俊彦&平松和広&白石健二も、「サッカー」「幼馴染」と聞いて思い出さずにはいられない。ゴールキーパーの白石がウイングの平松にボールを繋ぎ、センタリングから田仲が豪快なシュートを決める「トリプルカウンターアタック」は彼らの絆があってこそのスーパープレーで、三苫薫→田中碧のホットラインとも重ねられるかもしれない。

 この三人は、『シュート!』の第四部となる『新たなる伝説』のラストで、7年後の姿としてW杯出場のエピソードが描かれている。予選リーグは端折られているが、ベスト16でドイツと対戦し、トリプルカウンターアタックで勝ち越しゴールを決め、ベスト8に進出している。この回が「週刊少年マガジン」に掲載されたのは2003年のことで、リアリティを感じていた読者は少なかったかもしれないが、今大会で日本代表は「ドイツを倒してベスト16に進出」しており、決して夢物語ではないと思えるようになった。

 サッカー漫画は人気ジャンルとして確立されており、アニメ化でも話題になった『アオアシ』や『ブルーロック』をはじめ、多くのヒット作が生まれ続けている。トレーニングや戦術についての新たな知見も取り入れられ、関係者が高く評価する作品も多い。そのなかで、「2022年W杯」という最新の話題から、こうして過去の名作を掘り起こすのも楽しいものだ。漫画家たちが日本サッカーの未来を信じて描き続けた夢がいくつも現実になっており、これから先、世界最強のストライカー(ブルーロック)や、恐るべき視野の広さで試合を支配するサイドバック(アオアシ)が日本から生まれることにも期待したい。

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