『SLAM DUNK』が描いたのは「基本」の大切さだった 桜木花道が最後に放った“普通のシュート”の意味

『SLAM DUNK』が描いた「基本」の大切さ

 いよいよ明日(2022年12月3日[土])から、待望のアニメ映画『THE FIRST SLAM DUNK』(原作・脚本・監督/井上雄彦)が公開される。

 そこで久しぶりに原作コミックを1巻から最終巻まで通読してみたのだが、あらためて気づかされたのは、『SLAM DUNK』というスポーツ漫画で繰り返し描かれている“基礎練習(基本)の重要性”だった。そう、誤解を恐れずにいわせていただければ、ある意味では、主人公・桜木花道が豪快にダンクシュートを決めるような派手な見せ場よりも、彼が一所懸命、体育館で汗を流している基礎練習の場面の方が心に残る、といえなくもないのだ。

基礎練習の場面の数々が物語に深みを与えている

 たとえば、1巻で、湘北高校バスケ部キャプテンの赤木剛憲が、体育館の隅でひとりドリブルの練習をさせられている(そして、徐々にそれに飽き始めている)“初心者”の桜木にこんなことをいう。

「キサマはスポーツというもんが全然わかっとらん!! 基本がどれほど大事かわからんのか!! ダンクができようが何だろうが 基本を知らん奴は試合になったら 何もできやしねーんだ!!」

 桜木は、その言葉にいったんはキレて体育館を飛び出してしまうのだが、すぐに頭を冷やして再びチームの元へと戻っていく。

 また、3巻でもシュートの練習時、桜木は赤木から同じようなことをいわれるのだが、この時はあまり彼の心には響かなかったようだ……(が、その後、赤木の妹・晴子が朝の個人練習につきあってくれ、結果、レイアップ・シュートを身につけることになる)。

 さらには16巻で、チームの全体練習が終わった後、桜木は赤木からボールの持ち方や正しいフォームを叩き込まれている(ちなみに『SLAM DUNK』の数ある名台詞の1つ、「左手はそえるだけ」はこのとき出てくる)。なお、このあたりからようやく桜木にもキャプテンの想いが伝わっていると見え、彼自身、「基本が大事!! だろ?」などと微笑みながらいえるようになっている。

 そして、22巻――圧巻なのは、安西監督の巧みな指導と、いわゆる「桜木軍団」(=桜木の不良仲間たち)の手助けもあって、桜木が2万本のシュート練習をやりとげる姿だ。

 そう、ここまでお読みいただければもうおわかりだろうが、なぜ上記のような基礎練習の場面の数々が感動的なのかといえば、それは、桜木のがんばりだけでなく、彼を支えてくれている人々のがんばりも同時に描かれているからに他ならない。むろん、そのことを(つまり、自分ひとりではない、ということを)桜木は充分わかっている。だからこそ、彼は短期間でさまざまなことを吸収できたのだろうと私は思う。

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