『異郷の爪塗り見習い』『クジャクのダンス、誰が見た?』『カオスゲーム』……漫画ライター・ちゃんめい厳選! 11月のおすすめ新刊漫画

ちゃんめい11月おすすめ新刊漫画

 今月発売された新刊の中から、おすすめの作品を紹介する本企画。漫画ライター・ちゃんめいが厳選した、いま読んでおくべき5作品とは?

『異郷の爪塗り見習い』まるかわ

 突然だが、私は社会人になってからずっと月一のネイルサロン通いを続けている。仕事中にふと目に入ったとき指先が綺麗だとそれだけで気持ちが上がるし、どんなに辛いことがあっても自分の好きな色やアートで彩られたネイルを見つめるだけで、なんとなく“守られている”ような気がするからだ。

 ーーネイルは現代社会で戦う私たちの武装。そんな常々思っていたことが設定の一つとして組み込まれた、たまらなく心が踊る異世界漫画が登場した。それが『異郷の爪塗り見習い』だ。ジェルネイルが趣味の会社員・佐原啓子(サーラ)は、ある日突然“爪で魔法を発動させる”異世界に転移してしまう。彼女はそこで爪に魔法の素材をペイントする「爪塗り」として働く事に......。

 元の世界では自分の意思表示がうまくできず、つらい会社員生活を送っていたサーラ。けれど、異世界で出会った仲間たちとの交流を通して「爪塗り」として新たな人生を歩む彼女の姿に励まされる。また、爪塗りの施術シーンの描写も大変細かく、異世界ならではのアートネイルが美しくて思わずうっとりとしてしまう。こんな異世界漫画待ってました!!

『クジャクのダンス、誰が見た?』浅見理都

 令和“月9”No.1視聴率ドラマと言われている「イチケイのカラス」。原作は浅見理都先生の同名漫画で新感覚のリーガル・エンターテインメントとして大きな注目を集めた。そんな浅見理都先生、待望の最新作が『クジャクのダンス、誰が見た?』である。

 物語はクリスマスイブに元警察官の山下春生が殺害されるところから始まる。逮捕されたのは彼が警察官時代に関わった一家六人殺害事件の犯人(死刑囚)の息子。父の冤罪を盲信する息子の怨恨による犯行かと思われたが、山下が娘・心麦に託した一通の手紙によって物語が急転する。

 心麦は父が遺した手紙をもとに数奇な事件の真相を追い求めることになるが、前作『イチケイのカラス』のようなコメディ色はナシの本格クライムサスペンスとなっている。疑惑と謎が交錯する中、唯一濁りなく響くのがタイトルにもなっているヒンディー語の諺。

 正確には「ジャングルの中でおどるクジャクのダンス、誰が見た?」という諺で、意味は「目撃者がいなくても価値があると言えるのか」というもの。本作でいうクジャクのダンスとは事件の真相......。誰が、何がクジャクのダンスを真実たらしめるのか。全てが伏線に見えて一コマたりとも目が離せない。

『カオスゲーム』山嵜大輝

 アフタヌーン四季賞2020冬のコンテストで四季大賞を受賞、さらにTwitterにて公開した際は13,000を超える「いいね」をもらい大きな話題を集めた『岸辺の夢』。そんな気鋭の漫画家・山嵜大輝先生による初連載が『カオスゲーム』だ。

 主人公は正義とスクープに燃える、週刊誌の記者・鈴木蘭。政治の闇を暴こうとする最中に、裏社会の人間に目をつけられてしまう。命の危機に直面する蘭だが、幼い頃に一度見たことがあるという“神”の存在、そしてお腹に刻まれた謎の痣によって、彼女は不思議な能力に目覚めてしまう。こうしてこの日を境に蘭は異能力者同士の戦いに身を投じていくことになる。

 単なる異能力バトルではなく、胎内にいた頃の記憶、神の存在、謎の宗教団体......どこかスピリチュアルを感じる要素が登場する“オカルトバトル”な展開が興味を掻き立てる。また、1話から全力疾走、怒涛の展開はまさにタイトル通りカオス。だが、蘭が持つ強い正義感、そして真実を暴くという彼女の仕事の信条が、このカオスな物語を力強く引っ張ってくれる。

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