『異郷の爪塗り見習い』『クジャクのダンス、誰が見た?』『カオスゲーム』……漫画ライター・ちゃんめい厳選! 11月のおすすめ新刊漫画
『北北西に曇と往け(6)』入江亜季
2022年で嬉しかったことは?と聞かれたら、間違いなく本作の新刊発売の出来事を挙げる。それくらい首を長くして待っていた、約1年10ヶ月ぶりの新刊『北北西に曇と往け』6巻。本作は、アイスランドを舞台に不思議な力を持つ青年・御山慧が繰り広げるロードムービー×ミステリー。叔父殺しの疑いをかけられ、さらには突然失踪してしまった弟・三知嵩を追う慧だったが、最新刊6巻は目を覆いたくなるような衝撃的な展開から始まる。
三知嵩とは何者なのか......。その真相に辿り着いたら全てが壊れてしまいそうな儚さ。そして、圧倒的な筆致で描かれるアイスランドの雄大な自然、季節を慈しむ食と暮らしの描写。巻を追うごとに魅力が増していく唯一無二の物語と絵からは、神々しささえ感じる。
『ブルーピリオド(13)』山口つばさ
最後に選んだのは『ブルーピリオド』待望の最新刊13巻。11月22日の発売日から1週間経過した今でも各電子書ストアのランキング上位をキープ、本作の注目度と人気の高さがうかがえる。高校の美術室で見た一枚の絵に心を奪われた主人公・八虎。本作は彼が初心者ながら美しくも厳しい美術の世界へと身を投じていく物語で、1〜3巻は美術予備校編、4〜6巻が東京藝術大学受験編、7巻〜は東京藝術大学入学後を描いている。13巻時点で藝大2年目の八虎は、大学の課題や教授たちからの講評によって美術への情熱に迷いが生じてしまう。悶々とした日々を過ごすなか、彼は学外のアート集団ノーマークスと出会うが......。
前巻ではノーマークスとの出会いによって、果たして八虎は前進しているのか後退しているのか......得体の知れないぬるりとした不安がつきまとい、もはやホラーマンガのような恐怖を感じる展開となったが、13巻ではこのノーマークス編がようやく完結。『ブルーピリオド』は、全ページ、全コマが濃過ぎて読了するのに毎巻とてつもなくエネルギーを使うが、全てが八虎の創作の源として帰結するので、この全て“繋がる感”がとてつもなく心地よい。
あと、最新巻を読んで何だかんだ一番恐ろしいのは八虎なのでは?と。柔軟さ、素直さ、俯瞰能力すべてを持っていて、何だかんだ人生経験ぜんぶを作品に昇華していく男。恐ろしい子.....。