『HUNTER×HUNTER』ブラックホエール号は「階層化された社会」 複雑化する物語を追う

『HUNTER×HUNTER』複雑化する物語

 冨樫義博の漫画『HUNTER×HUNTER』(集英社、以下『H×H』)の最新コミックスとなる第37巻が、ついに発売された。『H×H』は1998年から週刊少年ジャンプで不定期連載されている人気漫画。世界中に散らばる財宝や珍獣といった「未知」なるものへ挑戦するプロハンターのゴンが、クラピカ、レオリオ、キルアたち仲間と共に、様々なミッションに挑戦する姿が描かれてきた。

 32巻からは暗黒大陸と呼ばれる新世界にハンターたちが挑む新エピソードが展開されている。ファンタジーRPG(ロールプレイングゲーム)のようなゴンたちの冒険と、「念」と呼ばれる異能力を用いたバトルが見どころだった『H×H』だが、暗黒大陸編以降は新キャラが急増し、しかも全員の立場と心理状態を丁寧に描いていくため、巻が進むにつれて物語は複雑化している。

 現在は、暗黒大陸へと向かう大型渡航船・ブラックホエール号(以下、B・W号)の船内で物語が進行している。

 各組織と各登場人物の思惑が交差し、物語が複雑化していく中、本誌連載は2018年以降、長らく中断していたのだが、今年の10月、ついに連載が再開。連載再開と連動する形で前回までのエピソードが収録された第37巻が11月4日に発売されたのだが、久しぶりに『H×H』を読んで、情報量の多さと物語の複雑さに面食らった読者も多かったのではないかと思う。

※以下、ネタバレあり

 ハンター協会の会長だったアイザック=ネテロの息子と名乗るビヨンドがカキン王国の国王と共に暗黒大陸進出を宣言したことによって、ハンター協会はビヨンドを監視しながら暗黒大陸進出を目指すこととなる。そして、暗黒大陸攻略のため、ハンター協会を束ねる十二支んのメンバーにレオリオとクラピカはスカウトされる。カキン王国の第4王子が、殺されたクルタ族の仲間たちの「緋の眼」を所有していることを知らされたクラピカは、第4王子に接近するため、十二支んに入ることを承諾する。クラピカは14王子の護衛としてB・W号に乗船し、第4王子との接触を目論むが、船内では王子同士の殺し合いが始まっていた。

 王位継承戦は14人の王子による戦いだが、王子だけでなく、私設兵や雇われたハンターたちも戦う組織戦となっている。戦いに参加する者の多くは念能力者だが、王子には自身の念能力の他に、王家の義によって生まれた“念獣”が取り憑いている。念獣は王子を守護する存在で、各王子を狙うこともなく念獣同士も戦わないのだが、自らの意思で行動し、特殊な力で周囲の人々に影響を与える。この念獣の存在が、王位継承戦を複雑なものとしている。

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