上手だけど地味な異世界漫画、プロの添削で華やかに 主人公の少女を目立たせる工夫がすごい
元週刊少年漫画誌の連載作家・ペガサスハイド氏が自身のYouTubeチャンネルで「【漫画添削60】華やかに見える漫画を描くには? 〜プロ漫画家が教えます〜」と題した動画を更新した。SNSで自作の漫画を公開するクリエイターが増えている昨今、プロならではの視点が参考になる内容だ。
YouTubeにて、視聴者から寄せられた一見上手な漫画やイラストをプロの目線で細かく添削しているペガサスハイド氏。解説のわかりやすさとともに、あくまで本人の長所を生かすアドバイスが心地よく、自分では絵を描かない人も楽しく視聴できるのが特徴だ。動画でイラストや漫画の添削を行うクリエイターは少なくないが、そのなかでも高い人気を誇り、チャンネル登録者数は15万人を超える。
今回の動画では、趣味で漫画を描いているというクロさんから寄せられた、薪割りに失敗する少女のコミカルな漫画を添削することに。異世界系の亜人のように見える少女が可愛らしく、ハイド氏は「左ページのルール(見開きの左側に掲載されることを想定したレイアウト)を守っているのがいいと思いました」と評価。ウェブで漫画を発表するのが当たり前になってきたなかで、製本時の断ち切りなどを意識した内容に「うれしかったです」との感想を語り、基本的な漫画のルールが守れていることが「素晴らしい」とした。
そんな作品をハイド氏の添削企画に応募したクロさんは、「プロの作家さんのように見栄えのする漫画を描きたい」という悩みを抱えているそうだ。確かに、キャラクターは可愛らしく、ストーリーもわかりやすいが、画面が比較的地味に見える。ハイド氏は、「背景が描かれていないけれど、白さが気にならず、手抜きに見えないのがいい」と作品を褒めつつ、地味に見えてしまう決定的な要因として、「可愛いメアちゃん(薪割りの少女)ではなく、薪が目立っていること」を指摘した。「読者は薪よりもメアちゃんが見たい」と言われると、なるほど薪の方に目がいく作画になっていると気付かされる。
詳しくは動画を見ていただきたいところだが、添削後の漫画は、少女が主役であることが一目瞭然の仕上がりになっている。さらに、「薪割りに失敗する」というギャグ要素をわかりやすくブラッシュアップし、「手刀で割る」という派手なオチも付け加えた。キャラクターや物語を引き継ぎながら、漫画誌に載っていても違和感のないような作品に変貌させており、さすがプロと唸らされる。
ハイド氏が単に技術的な解説をするだけでなく、漫画をつくる際の「意識」を伝えている。読者を意識すること、細部まで手を抜かないことなどは、それがいきなりプロのようにうまくいかないのは当然として、すぐにでも取り入れられることだ。漫画やイラストに限らず、「ものづくり」全般にかかわる重要なポイントが示されている動画をチェックしてみてはいかがだろう。
■参考動画 https://www.youtube.com/watch?v=lRe-o9n8xVA