「少年ジャンプ+」で異色の華道部マンガがスタート! 『もえばな』が描く希望
好きなことが新たな世界へと導く
毎日のキツイ練習を経て深まるチームワーク、勝利へのあくなき執念......部活動モノといえば、そんなギラつくようなアツさを彷彿とさせるが、そのような要素は本作には登場しない。その代わりに『もえばな』には、とうに学生時代が過ぎ去った大人読者にも響くような希望で満ち溢れている。
九十九が華道部に入部したのは、お花の擬人化アニメ「ぶけぞの」がきっかけだ。擬人化された花が好きという気持ちからスタートした彼は、花の魅力を知り、やがて花で表現する生け花に興味を持っていく。この彼の“好き”が徐々に形を変えて、華道部という新しい世界へと導いていく過程が、作者・横山左先生の美麗な筆致によってドラマチックに描かれている。そんな九十九の物語は、誰しもが心に秘めているであろう好きな物事は、実は自分を新たな世界へと導いてくれる入り口になっているのかもしれない、という希望を与えてくれる。
とはいえ、その新しい世界が楽しいことばかりであるとは限らない。未経験ながら華道部へと入部した九十九を待ち受けるのは、流派によって異なる理念や技法、そしてそれぞれの部員の花への向き合い方の違い......。作者・横山左先生による入念な取材と準備によって描かれる華道部の世界はもちろん、“好き”に導かれて華道部の世界へと足を踏み入れた九十九の物語をぜひ見届けてほしい。