郷愁を誘うあやかし物語『妖しいご縁がありまして』など話題作続々! ライト文芸の王道「ことのは文庫」の魅力

「ことのは文庫」の魅力に迫る

 2019年に創刊された、マイクロマガジン社の「ことのは文庫」。「オトナ女子のための文芸レーベル」をコンセプトに作品を展開するレーベルは、創刊3周年を迎え、さまざまなキャンペーンを展開するなど盛り上がりをみせている。

 9月1日から、中島愛ナレーションによる新作TVCMも公開。CMで取り上げられているのは、『妖しいご縁がありまして』(著:汐月詩)と、『陰陽師と天狗眼』(著:歌峰由子)の2作だ。『妖しいご縁がありまして』は、石川県を舞台にした女子高生と白狐による記憶と宝探しの物語。そして『陰陽師と天狗眼』は、広島県巴市の市役所に務める公務員陰陽師と、フリーの山伏がバディを組むもののけファンタジー。どちらの作品も、特定の地域を舞台にしたご当地小説×あやかしファンタジーをベースにしており、あやかしものの人気の高さがうかがえるラインナップとなっている。

 ことのは文庫は、現在活況をみせるライト文芸レーベルの一つとして位置づけられるだろう。ライト文芸とは、ライトノベルと一般文芸作品の間にあるような小説の作品群を指し、その嚆矢は2011年にメディアワークス文庫から発売された三上延の『ビブリア古書堂の事件手帖』だとされている。本作のヒットを受けて各社は新レーベルを立ち上げ、ライト文芸という用語も定着を見せていく。読者層はライトノベルを読んで育った大人世代が想定されており、2014年の富士見L文庫や2015年の集英社オレンジ文庫創刊以降は、女性読者をターゲットにした作品が増えていった。

 ライト文芸は、キャラクターの個性が立った内容と、イラストをカバーに使用したパッケージなどが特徴とされている。内容としては、喫茶店や骨董屋などを舞台にしたお店ものや、妖怪やもののけなどが登場するあやかしもの、個性の強い探偵役が登場するライトミステリーなどの人気が高い。ライト文芸の王道路線をゆくことのは文庫は、各種人気ジャンルを手堅くおさえているが、中でもあやかし系作品の充実ぶりが際立つ。

 例えば、創刊ラインナップの一冊である『わが家は幽世の貸本屋さん』(著:忍丸)。幼い頃にあやかしが暮らす幽世に迷い込んだ人間の少女・夏織を中心に、あやかしとの交流をにぎやかかつ優しいタッチで描いた物語は好評を博し、全7巻のシリーズとして書き続けられていった。また鎌倉・鶴岡八幡宮を舞台にした『鎌倉硝子館の宝石魔法師』(著:瀬橋ゆか)は、宝石にまつわる蘊蓄や鎌倉のロケーション、そしてスイーツ描写が魅力的な作品だが、イケメンに変身する黒猫の使い魔が登場するなどあやかし要素も顔を出す。

 今回のコラムでは、ことのは文庫らしいエッセンスが詰まったあやかし物語として、『妖しいご縁がありまして』を紹介したい。本作は小説投稿サイト「エブリスタ」に発表ののち、ことのは文庫から書籍化されており、現時点で第2巻まで発売中のシリーズである。

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