モデル・小谷実由 初エッセイ集「ありのままの自分を表現できる場所に出会って軽やかになれた」
いまの言葉を入れることによって完結する
小谷:読んでくれた方が楽しい気持ちになってもらえるもの、私が自分らしいなと思えるものを、ウェブ連載の原稿の中からピックアップしました。最初は私がピックアップしていって、客観的な意見も聞きたかったので、編集の方にも「入れた方がいいものは何だと思いますか?」と聞いたりして。「これは小谷さんっぽい」、「読んでいてすごくおもしろかったから、入れた方がいいと思いますよ」とか、外側の意見をいろいろ聞いてみて、納得したら候補から外していたエピソードも入れるようにしました。
あとは加筆修正も、結構しています。編集の方に「ここ、もうちょっと読みたいです」と言われた箇所を書き足したり、後日譚を追記したりしました。本から知って、ウェブの方を読んでもらえることもあるかもしれないし、いろんな楽しみ方をしてほしかったので、二度美味しい内容にしようとは、意識しましたね。連載当時の気持ちは残しつつ、いまの気持ちものせてアップデートさせたかったんです。
――巻末には「振り返り」も追加されていましたね。
小谷:当時の自分にツッコミを入れたかったんです。じゃないと、恥ずかしくて世に出し切れない(笑)。この3年間は、キャリア的にも、さまざまな変化があった濃い3年間でした。何気なく書いていた文章でも、3年経ったいま読み返すと恥ずかしくて仕方ないものがたくさんあって……。いまの言葉を入れることによって完結する気がしたので、あのページを作りました。
この本にも偶然の出会いが起こるかもしれない
――無類の本好きの小谷さんですが、『隙間時間』はどんな一冊にしたかったのでしょう?
小谷:本って、誰かひとりでも大事にしてくれる人がいれば、何十年も残るものだと思うんです。たとえば、買った人が手放して古本屋さんへ渡っていったとしても、新しい持ち主が手にするかもしれない。私がおばあちゃんになったときに、本の中の私と同じくらいの世代の女の子が、この本を手に取るかもしれない。私も本屋さんで、女優さんが若かった頃に出された本を見たときに、この人のこの頃って、いまの私と同い年だ、と思った経験があったので。そうした本との出会い方って、いいなと感じたんです。『隙間時間』にも、そういうことが起こったらいいな、と思っています。
私は、読書はもちろん、本の存在自体も大好きなんです。いい表紙や素敵な装幀の本があると買ってしまいます。だから、持っているだけで満足感がある本にしたいとも思いました。本って、一生のうち何冊も出せるものではないので、これが最初で最後かもしれない、という気持ちでつくりました。
――ブックデザインは、コズフィッシュの祖父江慎さんが手掛けられています。小谷さん直々のオファーだったそうですね。
小谷:そうです! 過去に一度、お仕事でご一緒させていただいたことがあって。祖父江さんのお人柄がすごく素敵で、大ファンになりました。いつか本を出すことになったら、絶対にお願いしたいなと、ひそかに夢だったんです。
――『隙間時間』のブックデザインで、好きなポイントは?
小谷:天の部分(※本を立てた際、上に見える切り口)が「天アンカット」という、不揃いな製本になっているところです。隙間がちょっと空いていたりして、隙間時間らしくて好きですね。
本の判型も祖父江さんが提案してくださったんですけど、「ペーパーバック」という、コートのポケットにポンと入れて持ち歩くのにちょうどいいサイズ感で、とても気に入っています。私といえばこう、というわかりやすいものではなくて、些細な私らしさみたいなものを汲み取ってつくってくださった感じがして嬉しかったですし、本当に特別な本だなと思えます。