『インク色の欲を吐く』『お化けと風鈴』『ブレス』……漫画ライター・ちゃんめい厳選! 8月のおすすめ新刊漫画
アフタヌーン『山口つばさ短編集 ヌードモデル』山口つばさ
『ブルーピリオド』の山口つばさ先生による初の短編集。1作目に収録されている表題作「ヌードモデル」は、美大を目指してデッサンに没頭するクラスメイトの夏目と、罰ゲームで彼女を落とすためにヌードモデルに立候補したヤンキー高校生・百瀬の歪な交流を描く。どことなく『ブルーピリオド』の原型を感じさせながらも、読後に甘美な余韻が残るところがたまらない。その他収録作は、女性のふりをして承認欲求を満たす男子高校生が事件に巻き込まれる「おんなのこ」、吸血症のホストと自己評価の低い女医の物語「神屋」など。満たされない欲求、快楽、歪んだ愛情といったアングラな感情が詰まった一冊。
モーニング『日暮キノコ短篇集 特異なあのコ』日暮キノコ
最後にご紹介するのもまたまた短編集。『喰う寝るふたり 住むふたり』や『個人差あります』でお馴染み、日暮キノコ先生の『日暮キノコ短篇集 特異なあのコ』には、タイトル通り“特異”な体質を持った男女が織りなす5つの短編が収録されている。胸が突然〇〇になってしまった少女、4年に1回しか歳を取らない女性......など、とにかく主人公の設定が特異であるため、冒頭からぐっと引き込まれてしまう。だが、物語の根底にあるのは、思春期特有の性の悩み、誰かと人生を共にすることの尊さや過酷さといった、私たち読者にも通ずる普遍的なテーマだ。主人公たちと同じ設定の読者はいないかもしれないが、それぞれの物語に共感する読者はきっといるはず。