掟ポルシェ「サイゼリヤに文句を言ったらバチが当たります!」 不味いものを不味いと言える男のグルメ論

掟ポルシェが語る、男のサイゼリヤ論

「体に良いから食べる」という考えが嫌い

――ジャンクフードについて「消化吸収の仕組みを無視した大人にのみ許された快楽」と書かれていたのも印象的でした。

掟:体に悪いものを分かっていながら摂取してやったぜ、という感覚は大人に許されている特権であり、文化ですよ。文化レベルが上がっていくと、食だったら「美味しい」だけがポイントじゃなくなっていくじゃないですか。俺は好きじゃないけど、ラーメン二郎の醍醐味も満腹感を超えたところにある、ランナーズハイみたいなもので。食への興味として、単なる食欲以外の部分があっていいと思うんです。

 最後に収録されている対談でサニーデイ・サービスの田中貴さんが言ってましたが、美味しいものは油と塩分でできているので、それをある程度強めにしないと現代の感覚では「特徴のないもの」として見過ごされてしまう。彼は両方を強めにする店の姿勢はわかるけど、自分の好きな店がそちらに傾いていくのを嘆いてましたね。ただ、現代のラーメンって異常に塩分濃度の強いしょっぱいものとかもそれなりにあると思いますが、それを普通に美味しく食べることもできるし、美味しさの向こう側にあるものとして味覚を超えた部分で享受することもできる。

 もちろん成長期の子どもにジャンクフードばかり食べることは勧めませんよ。でも大人になってから、ある程度は体に悪い物をたまに食べるのも娯楽の一環じゃないですか。昔から嗜好品って基本は体に悪いものですよね。タバコなんかもそう。だけどタバコには酩酊感を味わえるという利点もある訳で、辛い労働の後に一服すると疲労が取れたように感じたりする。大人には辛い労働があるのだから、何か紛らわすものが必要ですよ。

――たしかに今まで認められていた嗜好品が、過剰に悪とされる風潮は増えつつあるように思います。

掟:怖いのは、近い将来にお酒を飲むことも禁忌される世の中になるんじゃないか、ということですね。ストレスが溜まったときに酩酊して誤魔化すという逃げ道は、社会にちゃんと残しておく必要があると感じています。日常で溜まったストレスを味によって発散することもできる訳ですし、医食同源だけが食の価値ではないですから。だいたい俺は「体に良いから食べる」という考えが嫌いなんですよ。「旨けりゃ体に悪くてもいいじゃん! 何のために食事してるんだよ!」と常々思ってます。旨いが一番じゃない食事の選び方はおかしい。

 食の上で、過剰に健康に気を遣う風潮については『美味しんぼ』の影響も大きいと思います。『美味しんぼ』で悪とされる「うま味調味料」は、起源をたどるとたしかに昔は石油から精製していたんですが、今は生成方法も原材料も違うので体に悪くない。ちゃんと進歩している訳だし、俺はバンバン使いますよ(笑)。現代ではうま味調味料の味をアクセントに使った昔ながらのラーメンなんかも注目されてきているし、所謂「化調」を悪者にしていた時代はもう終わったと思っています。そして、食に関しては「体に悪い物はやめよう」という言説によって、旨さを犠牲にするのは良くないというのが俺の意見です。「まずは旨いかどうかだろ!」と。「旨くて体に良いもの」ですか? そんなの好きに決まってるでしょ(笑)。

■書籍情報
『食尽族~読んで味わうグルメコラム集~』
掟ポルシェ 著
発売日:2022年6月16日
価格:1650円
出版社:リットーミュージック

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