祝『僕の心のヤバイやつ』アニメ化決定! 原作の魅力とアニメ版への期待

『僕ヤバ』アニメ化で期待したいこと

 多くの中学生が夏休みの日々を過ごす2022年8月1日、漫画家・桜井のりお氏のTwitterで『僕の心のヤバイやつ』(以下、『僕ヤバ』)に登場する市川京太郎と山田杏奈が渋谷駅周辺でデートする様子が投稿された。

 同日13時から市川の目に映る山田の姿を描いた数々のイラストが投稿されたかと思えば、日付が変わったと同時に、本作のアニメ化が発表されたのである。このサプライズにSNS上ではファンを中心とした大きな盛り上がりが見られた。本稿ではアニメ化を記念し、本作の魅力や映像化に期待することを考察したい。

中学生の些細な日常と繊細な心情

 『殺人大百科』といった本を読んだり、死体になったクラスメイトを想像したりと、俗に“中二病”と呼ばれるような思考を頭のなかで繰り広げる中学生・市川は、雑誌のモデルを務める学校イチ美人・山田のことを気にかけていた。そんな市川はある日、山田の知られざる一面を知ることとなり少しずつふたりは距離を縮めていく。市川の視点を中心とした中学生たちの日常が描かれる作品である。

 ここまでの説明だと、市川は残虐非道なキャラクターに思えてしまうかもしれない。ただ山田はじめクラスメイトと会話する際に震えた声を出してしまったり、本能と理性のはざまで葛藤をしたり、ときに自身の抱く心情を素直に受け止めたりーー。これらはすべて市川の行動であり、成長の過程にある未成熟な様子も描かれるからこそ、恐ろしい思考を含め市川に可愛らしさを覚えてしまうのだ。

 思春期真っ只中の市川をはじめ、作中に登場するキャラクターは人目を気にすることで生まれる恥じらいや異性の存在を意識しながらも、ときに等身大の自分を受け入れようとする素直な人物ばかり。『僕ヤバ』は中学校生活の些細な日常、そして思春期の繊細な心情を丁寧に描いた作品といえるだろう。

 そんな本作では授業の発表で使うため黒板に貼られた資料をカッターで切ったり、下り坂で自転車を投擲したりと、ときに市川の衝動的ともいえる行動が描かれる(もちろん、これらの行動は市川なりの善意から生じたものであるが……)。アニメ化によって彩りが加えられる些細な日常、体温のある声によって表現される繊細な心情。そして大胆なアクションシーンが映像化されることによって漫画とはひと味違った迫力が生まれ、漫画で描かれた市川や山田たちの世界が拡張されることに期待が膨らむ。

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