漫画家・ヒロユキ ラブコメ界の大御所が語る「ロレックスに出会い再起できた」ピュアすぎる腕時計愛と超貴重コレクション 

漫画家・ヒロユキが語る 純粋すぎる腕時計愛と貴重なコレクション

 『カノジョも彼女』の連載が始まった直後、全世界を席巻したコロナ騒動が発生。4月には初めての緊急事態宣言が出された。その間、ヒロユキは家からほとんど出ずに漫画制作に没頭。もともと漫画家はインドアな仕事といえるが、社会の空気感に抑圧された状態だったという。そして6月、緊急事態宣言が解除されたタイミングでふらりと都心に向かった。

「この外出がまた、よくなかったんですよね(笑)。時計店で見た、パテックフィリップの5235を買ってしまいました。そのあとはパテックのノーチラスやアクアノート、H.モーザーのストリームライナー、A.ランゲ&ゾーネの1815アップ/ダウン、そしてオデュッセウスまで購入してしまったのです」

 堰を切ったように腕時計を買い続けたこの頃を、「もう止まらない状態でした(笑)」と語るヒロユキ。短期間でとてつもない数の、しかも名品ばかりを手にしてしまったのである。なかでもお気に入りの1本が、取材時にも身に着けていたA.ランゲ&ゾーネのオデュッセウスだ。漫画を描いている最中にも愛用していると話す。

「オデュッセウスは、究極のデイリーウォッチだと思っています。作りが本当にいいんですよ。ブレスの調節もしやすく、10気圧防水で、ボタンで日付が変えられるなど、実用性も申し分ない。日常使いで傷がついても気にならないデザインです。機械式腕時計に求められる美しさ、使いやすさなど、すべてを備えていると思います」

「オデュッセウスはランゲ特有の美しさをもちながら、頑丈なロレックスのような感覚で普通に使えてしまうのが凄い」と、絶賛。ヒロユキは取材後にタブレットで原稿を描いていたが、オデュッセウスを腕に巻いたまま。身に着けていることを忘れるほど、着け心地は突出しているそうだ。単行本の校正作業の写真も決して“ヤラセ”ではなく、自然な光景だったのだとわかる。もっとも、宮島礼吏の指摘は半分当たっているのかもしれないが……
H.モーザーのストリームライナー。近年、様々なブランドで緑色の文字盤が流行しているが、その先駆けとなったモデルのひとつだろう。「『カノジョも彼女』の連載1年目の頃に予約して、半年後に入手できました。文字盤の美しさが注目されますが、ブレスレットもしなやかで、“青虫”のようなぬめぬめした質感が魅力です」

採算を度外視するリシャール・ミルの腕時計に触発される

 数々の腕時計を手にしてきたヒロユキが、特に気に入っている1本が、リシャール・ミルの「RM60-01」である。フライバッククロノグラフからアニュアルカレンダー、GMT、100m防水、さらに方位がわかる機能までついている、てんこ盛りの逸品だ。ヒロユキはこの腕時計を「究極のロマン時計」と表現する。そして、クリエイターである自身の感性を触発する存在であると話す。

「リシャール・ミルって、少年が作ったような腕時計だと思います。『こんな腕時計あったら面白いじゃん! みんなびっくりするでしょ?』というエッセンスを、途方もないお金を注ぎ込んでつくった夢の腕時計。この感覚、漫画家なので凄くわかるし、共感します。僕も『こんな漫画を描いたら読者は驚くだろうな、楽しんでもらえるだろうな』と思いながら、創作に打ち込んでいますから」

 事実、ブランドの創業者であるリシャール・ミル氏は、自分が作りたい腕時計を作ると公言している。他のブランドを職人がつくった腕時計とするならば、リシャール・ミルはまさにクリエイター的な思考でつくられた腕時計といえよう。ヒロユキがシンパシーを感じるのは、自身に通じる創り手の想いを感じ取っているからなのだ。

リシャール・ミルの「RM60-01」。ケース径は50mmもあるが、不思議と腕にも馴染むそうだ。機能を目いっぱい詰め込みつつも、曲面の処理も丁寧で、細部まで行き届いたデザインがなされているのはリシャール・ミルの真骨頂。「僕はボタンを押せる時計が大好き。触って楽しめる点がガジェットとして好きなんです。時計ってファッションではなく、おもちゃみたいなもので、いわばプラモデルの延長線かな」と話すヒロユキの目は、少年のようにキラキラと輝いていた。


 ヒロユキは、ひょんなことから腕時計に興味をもち、買い始めたことで、漫画を描く意欲がわき、さらに、今では創作のヒントや刺激まで得ている。とりわけ、リシャール・ミルの採算を度外視して作りたいものを作る姿勢は、憧れでもあるという。

「漫画家も、商業誌の連載では売れ行きを意識して物語をつくることがあります。ところが、そんな妥協を一切していないのがリシャール・ミル。一点突破で自由な創作をしていのは、めちゃくちゃかっこいい。この腕時計を手にすると、クリエイターとしての初心を忘れないでいたいと思わせてくれるのです」

 時計に触発されたヒロユキは、これからどんな漫画を生み出していくのか。今後の活動を、腕時計を見ながら楽しみにしたい。

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