医療×ごはん漫画『神辺先生の当直ごはん』 命と食の大切さに気づく良作を現役看護師がレビュー

医療×ごはん漫画『神辺先生の当直ごはん』

 個人的に好きなのは、神辺先生が子どもへの問診で、「昨日何食べましたか?」と家族に聞くことが多いのだが、ついでに「ちなみにどんな味付けですか」と聞いちゃうシーン。「そこ気になるんかい!」と心の中でツッコミを入れつつ、とても和んでしまう。神辺先生のように、忙しいなかでも落ち着いて場の空気や緊張を緩ませてくれたり、ときには冗談を言ったり、ユーモアによって視野を広げてくれる存在はとても心強く、安心感もある。小児科をはじめとして、医療の現場にとって大切なことだろう。

 そして、本作であらためて気づくのは、”食事のもつ役割は一つではない”ということ。美味しいと感じるほどに今日の自分の仕事に自信がもてたり、達成感を味わうことができたり。一緒に食べる人と同じ気持ちを共有したり、日常を取り戻すひとときであったり、明日への活力となったり……。栄養をとるためだけじゃないというのが、この作品からよくよく伝わる。人の命と向き合い、大切にするのと同時に、自分のことも食事を通して大切にしてほしいと思う。

 最初は食事に無頓着だった平野君も、何度か食事をともにすることで、神辺先生の作ったご飯の味付けの違いに気づくようになっていく。それに対し、「平野くんはきっと良い医者になるよ~そういう細かいところにも気付こうって意識してるからさ~」と何気なく語る神辺先生。平野くんは完璧主義でまだまだ未熟だと自分を責めてしまうところもあるけれど、とても勉強熱心だ。小児救急の現場エピソードや神辺先生の料理・食事シーンとともに、引き続き平野くんの成長も楽しみに見守りたい。

 さて、腹が減っては戦(仕事)ができぬ! 今日も正しく食事を楽しみ、1日頑張っていきましょう!

※写真はマグロとアボカドの山かけ丼の再現。神辺先生の作る当直レシピは簡単にできるものが多いのでおススメ。

書誌情報

『神辺先生の当直ごはん』BRIDGE COMICS1~2巻
作者:ちんねん(原作)、能一ニェ(漫画)
出版社:KADOKAWA

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