薬師の妃、侍女の検視官……『薬屋のひとりごと』人気で後宮舞台の医療もの続々 ラノベランキングを考察

ラノベランキング、後宮医療ものが続々

参考:Rakutenブックスのライトノベル週間ランキング(2021年5月10日~16日)

 4月30日の発売前から、Rakutenブックスのライトノベルランキング1位に挙がっていた日向夏『薬屋のひとりごと 11』(ヒーロー文庫)が、最新のランキング(5月10日~16日)でも引き続き1位に。同じ巻のドラマCD付き限定特装版は6位で、前作の『薬屋のひとりごと 10』も18位にランクイン。コミックスも含めてシリーズ累計1250万部に達する人気ぶりを、改めて見せつけてくれた。

 さらわれて後宮に売られた猫猫の薬学や医学の知識を、皇弟ながら宦官のふりをして後宮にいた壬氏が見いだしたことで始まったシリーズ。前巻から続いて最新刊も、大量発生したバッタがあらゆる作物を食い荒らす大蝗害に見舞われた戌西州が舞台となっていて、都から西都に派遣された壬氏に同行した猫猫も、医官付き女官として被災者の治療などに当たっている。

 腹痛に苦しむ少女の病因を、猫猫が症状や状況から見事に言い当てる、シリーズならではの医療謎解きが楽しめるが、それ以上に最新刊では、西都を治めている玉鶯という人物が画策していた謀略が、いよいよ動きだす寸前まで行く政治ドラマが面白い。

 清廉であろうとする者を暴力が抑圧するが、横暴が過ぎれば反発を招いて誅される。そんな因果応報の様がドラマチックな展開の中に描かれる、シリーズでも屈指の重厚さを持った巻だ。

甲斐田紫乃『旺華国後宮の薬師 4』(富士見L文庫)
甲斐田紫乃『旺華国後宮の薬師 4』(富士見L文庫)

 『薬屋のひとりごと』シリーズの人気もあって、後宮が舞台で且つ医学や薬学の知識が鍵となる作品が好まれるようになっているのだろうか。ランキングで31位に入った甲斐田紫乃『旺華国後宮の薬師 4』(富士見L文庫)も、少女が後宮にあって薬の知識を生かした活躍を見せるシリーズだ。

 薬店の娘として育った英鈴は、役人や貴人との関係を強めたい父親の思惑に乗せられ、宮女として後宮に入れられる。そこで働きながら、喉に良いお茶を作って売っていたところ、評判を聞きつけた皇帝から苦くない薬を作ってくれと頼まれた。当然のように英鈴は、周囲から嫉まれ虐められる。それを見た皇帝が、追い出すどころか妃嬪の1人にしてしまった。何という大出世。とはいえ、男女の関係にはならず、甘党という皇帝のために苦い薬を改良する仕事を継続する。そんな始まりを経て第1巻で英鈴は、地方の蓮州で大流行していた、全身から水分が抜けて死んでしまう「苦渇病」を治すために活躍する。

 効かない薬がない訳ではないが、極度に苦くて大人でもなかなか受け付けない。「良薬は口に苦し」といっても、飲めない薬では意味がない。かつて熱病に罹った弟が、苦い薬を飲めないまま死んでしまって以来、「不苦の良薬」を探求していた英鈴が、女性だからと信用してくれない住民たちを相手にどんな工夫をこらすかが読みどころだ。

 蓮州での経験を経て、妃嬪でも最高の正一品へと引き立てられてしまった英鈴に、ライバルが登場するのが第4巻。皇帝に出す苦くない薬の作り方について勝負をし、隣国で発生し始めた「苦渇病」を治す工夫で勝負をする。

 遊牧が主流で草木があまりない隣国では、蓮州と同じような工夫は使えない。英鈴は大勢の人たちを救うことができるのか? そんなストーリーでは、第1巻と同様に、女性に対する蔑視を実力で乗り越えさせる反抗の意思が貫かれる。イケメンとの恋物語に留まらない、才知を生かして自立を目指す女性のストーリーとして支持されているのかもしれない。



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