【漫画】もしも憧れの先輩が河童だったら……? 恋愛×相撲漫画『河童大一番』がおもしろい

ーー物事がとんとん拍子に進んでいく様子から心地よさを覚えた作品でした。創作したきっかけを教えてください。

両棲類:昔から自然で暮らす生き物や妖怪といった静かに身を潜めているけれど、うごめいているものに魅力を覚えていました。そのなかで河童はドジな伝説が多く残っており、人間くさいところが気に入っていて。河童を題材にした漫画を描きたいと思い本作を創作しました。

 河童のシンボルでもある相撲と可愛い女の子を組み合わせたのは、登場人物につよい個性を生むためです。河童というキャラクターを世に出ているものとは異なるイメージで再構築したいと考え、思いを寄せる男の子たちを河童の女の子が投げ飛ばしていくという物語が生まれました。

ーー作中ではなぜ先輩は河童なのかといった謎めいた部分が多くありました。

両棲類:本作を描くなかで細かいところは捨てようと思っていました。なぜ川童先輩はモテるのかとか、なぜ相撲なのかとか。それぞれ説明するよりも、自分の世界観を突き通すことを意識していました。

ーー印象に残っているシーンを教えてください。

両棲類:河原で川童先輩と友人が恋について話すシーンですね。川童先輩が“「好きだ」とか言われてもイマイチピンとこないから”と話す場面が個人的には好きで。自分がモテているのはわかっているけれど、自身にとっての恋愛をわかっていない。そして大滝川くんもなんで川童先輩を好きになったのか理解していません。

 彼らにとって恋愛は得体の知れないものであると共に、わからないということについて考え続けている様子が美しいと感じています。本作はわからないことに振り回されている少年少女を見て、読者の方に楽しんでもらえる漫画となっていたらうれしいです。

ーー恋愛をわかっていない川童先輩ですが、不思議と皿の水が波立つシーンもありました。

両棲類:大滝川くんが1度目の告白で川童先輩にぶん投げられて空から見た景色を思い出す場面があります。ここでは恋をすることで見える景色が変わってしまったということを描きたいと思っていました。川童先輩の皿の水が波立っていたのも、恋愛によってなにかが変化する前触れなのかと思いますね。

ーーなぜ大滝川くんが飛ばされたのは鳥取砂丘だったのでしょうか。

両棲類:大滝川くんを鳥取砂丘へ飛ばしたことに意味はありません。過去に旅行で鳥取砂丘を訪れたのですが、いいロケーションだなと感じ本作で描きました。

ーー創作活動を始めたきっかけを教えてください。

両棲類:小学生のころから漫画を読むことも、描くことも好きだったのですが、本格的に漫画を描き始めたのは2、3年前からですね。就職してから色々なことがあったのですが、精神的につらかったときに漫画が心の支えとなっていました。

 漫画を描きはじめ同人誌の即売会に出展しようかと思っていたころにコロナウイルスが流行し、即売会に参加することができなくなってしまいました。その間に作品を描きためて、通販サイトで同人誌を発売したりSNSで作品を発表するようになりましたね。

ーー影響を受けた作家さんは?

両棲類:自分が自然や生き物、ぐちゃぐちゃな街並みとかシュールな会話を描きたいと思ったのは、逆柱いみり先生の影響が大きいです。五十嵐大介先生や漆原友紀先生、黒田硫黄先生からも影響を受けているかと思います。

 人々の生活や息遣い、淡々と過ぎていく日常。目立たないんだけれど、静かに確かに受け継がれてきたものが大好きで。小さなことの連続だけど、途切れず川が流れていくように続いていく暮らしの様子を描きたいと思っています。田島列島先生の『子供はわかってあげない』で描かれる“世界に必要なのは「自分にしかない力」じゃない/誰かから渡されたバトンを次の誰かに渡すこと」だけだ”と話すシーンもすごく好きです。

ーー今後の目標を教えてください。

両棲類:今は担当さんと共にネームをつくっている段階なので、まずは商業作家として活動することを目指していきたいです。また引き続き同人誌の即売会といったイベントに参加し、作品を発表していけたらなと思います。

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