【推しの子】、推しが武道館いってくれたら死ぬ……“推し系漫画”から考えるアイドルとファンの関係

『推しの肌が荒れた』

 2022年6月に発売された漫画家・もぐこん氏の作品集において、表題作となっている本作。女子高生・マユが推すのはアイドル・真鈴ちゃん。SNSでマユが描いた真鈴ちゃんのイラストがバズり、次第に真鈴ちゃんはメディアへの出演を増やしていく。

 投稿がバズったあともイラストを投稿し続けるマユ。「私には描くことでしか推せないから」という彼女の台詞や『推しが武道館いってくれたら死ぬ』におけるえりたちの姿から、推すことには応援の意味合いがつよく含まれているのだろう。しかし本作で描かれるマユの感情は応援だけではない。

私も真鈴ちゃんのダンス動画ずっと見てたから/毎日上げててすごいなって
「推す」って言葉じゃないんです/あの気持ち
ただ「描きたい」って

 マユが真鈴ちゃんを推したいと思うようになったきっかけは、“自身が描きたい”という気持ちであった。応援する意味やその対象として推しという言葉が広く用いられているなか、推したいという感情のはじまりには、アイドルが自分になにかを与えてくれたという原体験が存在しているのだろう。ゆえに推しに尊敬や憧れを抱き、応援したいという感情が芽生えるのだと考える。

 『推しが部下になりました』や『推しが我が家にやってきた!』など、推しを題材とした漫画が多数あるなか、多くの漫画では“まぶしい”や“キラキラ”といった光にまつわる表現が用いられる。推しの与えてくれる光は推す側の気持ちを明るく照らし、ときにマユのように自身の明日を照らす道しるべにもなるものなのだろう。

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