推しの子、推しが武道館いってくれたら死ぬ……“推し系漫画”から考えるアイドルとファンの関係

 マンガアプリ「少年ジャンプ+」で連載中の人気作『【推しの子】』のアニメ化が決定した。タイトルにある“推し”は、近年で広く用いられるようになった言葉だろう。SNSでは推しから派生した「推し活(推しを応援する活動)」や「箱推し(個人ではなくグループを推すこと)」といった単語も一般的になった。

 「推し」という言葉が知れ渡り、それを題材とした漫画も増えている。推す側や推される側はどんな世界を見ているのだろうか。本稿では「推し」や「アイドル」をテーマとして描いた漫画から、アイドルとファン間における「推し」について考察したい。

『【推しの子】』

 医者である雨宮吾郎が何者かに殺されたものの、目を覚ますと生前に推していたアイドル・星野アイの子どもに転生していた。アイの子・アクアとして、芸能活動を通じて殺害事件の真相究明に奮闘する作品だ。

 作中ではアイが「嘘は愛/私なりのやり方で愛を伝えてたつもりだよ」とファンに話すシーンが存在する。彼女はファンから喜んでもらえるように目の細め方や口角などを研究しながら演じていた。

 そんなアイの所属する事務所の社長も彼女のステージを見ながら「――うちのアイは/本物の嘘つき(ルビはアイドル)だぞ」と心の中でつぶやく。アイの嘘を知るアクアも「ズレずにいられないんだ…/あまりに強い光の前で/人は/ただ焦がされる」と語る。

 「アイドル」は「idol(偶像)」という言葉に由来し、推される側も、推す側も目の前にある姿が偶像だという側面を感じつつも、その眩しさに吸い寄せられてしまう。だからこそ実像よりも大きく、美しく見えてしまうのかもしれない。

『推しが武道館いってくれたら死ぬ』

 2015年に『月刊COMICリュウ』(徳間書店)で連載を開始した本作。「このマンガがすごい!2017」オトコ編12位に選ばれ、2020年にはアニメ化も果たした。

 フリーターの女性・えりが推すのは地下アイドルグループ「ChamJam」のメンバー・舞菜。えりは舞菜から素っ気ない対応をされていると感じるものの、舞菜は周りのメンバーよりも人気のない自分を応援してくれるえりに好意を抱いていた。自身の気持ちを隠すアイドル・舞菜と熱狂的なファン・えりの関係が描かれる。

 本作ではアイドルオタクとしてえりや友人たちと過ごす日常が鮮明に描かれる。CDを何十枚も購入したり、イベントの9時間以上前から外で行列に並んだりといった、推すことの具体的な行動も描かれる作品だ。

 推しのために奮闘するえりであるが、えりと舞奈が思いをすれ違わせながら進展していく関係は、まるで恋愛漫画のようにも感じ取れる。

 お互いの思いがうまく通じ合えない理由のひとつとして、アイドルを務めようとする舞奈の心情が挙げられるだろう。自分を愛してくれるえりに夢中になってしまいそうになるものの、舞奈はアイドルとして他のファンと平等にえりと交流する必要がある。そんな葛藤から舞奈はえりに素っ気ない態度をしてしまい、えりも舞菜が自身を避けているのではないかと不安に思ってしまう。

 本作が映し出したように応援に励む“推す側”の苦労、そしてアイドルを演じる“推される側”の苦労も存在しているのだろう。



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