2024.12.29 12:10

【webtoon試し読み】美しすぎる主人公になぜ共感？　実写映画化話題の『女神降臨』がメガヒット作になった理由

文＝リアルサウンドブック編集部、画像提供＝©yaongyi/LINE Digital Frontier、画像提供＝©映画「女神降臨」製作委員会

　コンプレックスを抱えた主人公が人生逆転ーーというストーリーには鉄板の魅力があるが、エンタメのトレンドになっている縦読み＆フルカラーの漫画「webtoon」の分野で、そのトップランナーと言える作品がある。LINEマンガのオリジナル作品『女神降臨』（yaongyi）だ。46ヶ月連続で読者数ランキング1位（※LINEマンガ毎日無料タブ／2018年10月～2022年7月）、国内累計閲覧数は9億回を超え（※2024年9月時点）、グローバルの累計閲覧数は64億回を記録している（※2024年3月時点）メガヒット作で、2025年には二部作での実写映画化が決定。あらためて注目が集まっている。

『女神降臨』プロローグを読む

　本作の主人公は、外見にコンプレックスを持ち、学校でも街中でも心ない扱いを受けてきた谷川麗奈。不意に見つけた動画をきっかけにメイクを必死で学び、“高校デビュー”を飾った「女神」だが、彼女が持つ、多くの人が共感できる等身大の魅力が本作最大のポイントだろう。読み進めるにつれて、気を抜いて“顔芸”をしてしまっている姿も愛おしくなるはずだ。

　麗奈はもともとオタク的な趣味を謳歌する楽しいキャラクターで、美しくなれば周囲に期待もするし、勘違いもすれば調子にも乗る。一方で、すっぴんがバレることを恐れ続け、それまで出会わなかったトラブルに巻き込まれていく様が、「人生の本質は外見ではない」ということを逆説的に教えてくれるのだ。単に「美しい顔になって人生逆転」という、ルッキズムを前提とした身も蓋もない物語ではなく、その上で「美しくなりたい」という純粋な思いにもしっかり寄り添った作品だからこそ、世界的に人気を博しているのだろう。

　優れたメイクは「魔法」ではなく、自身を魅力的に見せるための「努力」の結晶だ。「すっぴん→メイク」でクリエイターが激変する人気動画の数々を見れば、テクニック次第である程度、「自分好みの顔」に到達できることがよくわかる。麗奈が周囲を見返した大変身は、もちろんエンタメ的な誇張はあるが、ファンタジーのチートスキルとは違うリアリティがあるのだ。ものぐさで本来的に外見にも無頓着に思える麗奈のパーソナリティが、努力の末の劇的な「ビフォー·アフター」への納得感を強調している。実際に使えるメイク術も描かれているので、これからメイクを勉強したい、という人のモチベーションも上げてくれるだろう。

　麗奈だけでなく、作中に登場する個性豊かなキャラクターも楽しい。“出会い”を楽しんでほしいので詳細なネタバレは控えるが、麗奈がすっぴんの姿で出会い、仲を深めていく文武両道の謎多き転校生・神田俊、そんな俊と因縁があり、一見クールで攻撃的だが純粋さを持った五十嵐悠という二人のイケメンとの三角関係が見どころだ。その他、序盤で言えば、誰もが振り返るスタイルを持ちながら、麗奈にちょっかいをかけるワケアリの美女、麗奈の姉に好意を寄せる“残念なイケメン”の教師、天真爛漫でキラキラしているが一緒にいるとちょっと疲れるアイドル男子など、容姿こそ麗しいものの、それぞれに欠けた部分があるキャラクターたちが登場し、ドラマを盛り上げていく。コメディからシリアスまで、懐の深いストーリー展開のなかで、読者はそれぞれに推しキャラを見つけていくはずだ。

　「美しさ」は確かに大きなパワーを持つが、幸福な日々を送る上で、本当にアドバンテージになるのだろうかーー美しさを手に入れても悩みが尽きない麗奈は、そんな疑問を体現しながら日々を真剣に生きていく。実写映画化を楽しみにしつつ、まずは原作『女神降臨』を読み進めてほしい。

■webtoon『女神降臨』