面の『ハケンアニメ!』、点の『アニメタ!』ーーアニメ制作の裏側を描く2作を比較
作り手の熱狂を信頼する世の中へ
先日、参議院選に出馬表明をした作家の「クリエイターの待遇改善」に関する投稿がタイムラインに流れてきた。ヒット作への税金優遇で、現場に還付金で還元という内容だ。もちろんこれは実現してほしい。しかしヒット作をあとから支援するだけでは、これから先もアニメ制作に携わる人たちの真の「支援」とは言えないと感じた。
そもそも映画『ハケンアニメ!』でも描かれたように、何をもってして「ヒット」「覇権」というのかは非常にわかりづらい。配信やSNSが隆興している昨今においてテレビアニメに絞れば、視聴率やディスクの売上だけでは、十分な指標とは言えないだろう。どんなアニメが世の中で流行るかなんて、未来予知の力がなければ無理な話だ。
個人レベルはもちろん、世の中を動かすような作品が生まれるかもしれない――。本当にいい作品が観たいと願うのなら、作り手の熱狂を信頼する世の中にならなければならないのではないか。『アニメタ』や『ハケンアニメ!』に触れたうえで改めてこの投稿を振り返ると、こう思わずにはいられない。
またエンディングのクレジットまで見逃せない、倍速視聴なんてできないと改めて感じた。昨今では、クリエイターの方々が個人のアカウントで、携わった話数に関する投稿をしているのを見かけることもある。何度も繰り返し観てしまうそのシーンに携わったかもしれない人の名前を知れた時の喜びの理由が、『アニメタ!』や『ハケンアニメ!』で描かれていたように思う。
『アニメタ!』のように業界の裏側をピンポイントで描く作品には、若手制作進行の成長を描くアニメ『SHIROBAKO』もある。
全体像を『ハケンアニメ!』で押さえたうえで、『アニメタ!』の動画マン視点や『SHIROBAKO』の制作進行視点でセクションごとに深掘りする楽しさを知ってしまった今。叶うのならば、仕上げや背景、音楽、CG、撮影、編集などアニメ制作に欠かせない各セクションの物語も見てみたいと願ってしまう。