『王様ランキング』なぜ満足度高い? 親しみやすいキャラが問いかける、現代的なテーマ

『王様ランキング』満足度の理由

現代を彷彿とさせる世界でボッジが掲げた夢

 柔らかな印象を覚えるキャラクターのイメージとは対照的に、1人ひとりがつよい意思や欲をもち、ときに激しく対立することで本作の物語は進んでいく。

 ボッス王国の王妃であるヒリングはボッジには王になる資格がないと評し、実の息子であるダイダを次期国王に推薦する。しかし物語のなかでヒリングはボッジに対しのんびりと静かな場所で暮らしてほしいという思いが明かされる。

 ヒリングをはじめ、愛する女性のためにボッジやダイダを利用して力を手に入れようとするボッスや、忠誠を誓うためボッジを暗殺しようとするドーマスなどー-。登場人物たちは一概に悪とは判断できない思いを抱きながら対立し、ボッス王国全体を巻き込む大きな内乱に発展することとなる。

 また物語の舞台は1巻「第1話」で示されたとおり、高名な騎士を従えていることや町の発展度合、自身の強さなどの条件から各国の王様がランキング化される世界である。

 自身の価値に順位がつけられ、お互いの思いが対立する光景。それはまるで学歴やSNSアカウントのフォロワー数などによって人の価値に優劣があると感じやすく、互いの意見を正義か悪かの二元論によって判断しようとするあまり言い争いが起こるといった、現代のわたしたちが目にする光景にも似ていると感じる。

 そんな世界の主人公として描かれるボッジが1巻「第1話」でカゲに明かしたのは“世界一立派な王様になる”という夢だった。

 王様ランキングの1位ではなく、立派な王様を目指すボッジの夢は抽象的なものであり、“立派”の答えを出すことはむずかしいことであろう。ただ王様ランキングが存在し対立の起きている世界において、ボッジが目指しているものは普遍的な正義と置き換えることができるのではないだろうか。

 現代のわたしたちが暮らす世界にも似た環境で立派な王様を目指すボッジ、そしてボッジの物語を描く十日氏が“普遍的な正義”という答えのない問いに向き合っているからこそ、本作は現代に生きる数多くの人々にとって考えさせられる作品となったのだろう。

(1)PR TIMES,“2021年秋アニメ満足度ランキング発表!満足度No.1は『王様ランキング』《Filmarks調べ》”,2022-1-20,https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000253.000008641.html
(2)アニメージュプラス,“『王様ランキング』副監督が語る「超一級アクション誕生の裏側」”,2022-3-23,https://animageplus.jp/articles/detail/42992/3/1/1
(3)アニメージュプラス,“『王様ランキング』総作監が明かす「この作品だからできた作画表現」”,2022-3-22,https://animageplus.jp/articles/detail/42987/1/1/1

 

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