『王様ランキング』なぜ満足度高い? 親しみやすいキャラが問いかける、現代的なテーマ

『王様ランキング』満足度の理由

 2022年3月24日にアニメ『王様ランキング』(フジテレビ系)の最終話が放送され、SNSには物語の完結を惜しむ声や感謝の言葉が多く投稿された。

 作品にまつわる感想を眺めるなかで、本作は性別や年齢を問わず幅広い層に支持された印象を受ける。現に2021年秋に放送を開始したアニメ作品の満足度調査において、本作は『鬼滅の刃 無限列車編』を上回り1位に選ばれている(1)。

 もちろん作画のクオリティや声優の演技力など、アニメ作品として評価される点は多く存在しているだろう。しかし作品の根幹を成しているストーリーにこそ多くの人の心を掴んだ理由は存在しているはず。本稿では原作コミックスに焦点を当て、ボッジたちの物語が支持を集めた理由を考察したい。

キャラクターへの親しみを生む2つの描写

 『王様ランキング』は絵本作家を目指していた過去をもつ十日草輔氏が手掛ける漫画である。絵本らしさを感じるキャラクターたちが作品の穏やかな雰囲気を形成していると言っても過言ではないはずだ。

 アニメ『王様ランキング』副監督を務めた今井有文氏は本作におけるキャラクター造形の魅力としてシンプルさと丸み、柔らかさを挙げており(2)、総監督を務めた野崎あつこ氏はキャラクター全員がシルエットになっても分かるようなデザインであり、それぞれの個性に合った、誰ともイメージが被らないデザインになっていると評している(3)。

 高い評価を得るキャラクターたちが感情を表現する方法も特徴的である。

 1巻「第2話」でボッス王国の王子であるボッジが民衆や家来からバカにされる様子を目にしていたカゲは、平気な振りをしていたボッジが涙を我慢していたことを知る。ボッジを利用して高価の物品を搾取していたカゲは罪悪感を覚え「オレのバカッバカッ」と叫びながらタンコブができるまで自分を殴り続けた。

 1巻「第5話」でダイダと試合をすることとなったボッジは、ダイダの攻撃をいとも簡単にかわし続ける。ボッジに翻弄されるダイダは「くっそおおおっ」と叫びながら地団駄を踏みながら怒りをあらわにした。登場人物が全身で感情を表現する様子は、口から発する言葉以上に気持ちの高まりを感じ取れるだろう。

 丸みを帯びた線で描かれる個性豊かなキャラクターの造形と、身体をつかって自身の感情を表現する様子。これら2つの描写によって本作のキャラクターは子どもから大人まで親しみを覚えるものとなり、多くの支持を集めるきっかけとなったのかもしれない。

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