夏帆が写真集に詰め込んだ、20代最後の2年間 「自分自身も世の中も、目まぐるしく変化した濃密な時間でした」

夏帆が語る、20代最後の写真集

 女優・夏帆の最新写真集『おとととい』(SDP)が4月9日に発売される。夏帆の20代最後のかけがえのない瞬間を、2年間にわたって撮りためた本作。カメラマンを務めたのは、カロリーメイトの広告(『部活メイト』)や、ファッション誌『GINZA』(マガジンハウス)などで活躍する写真家・石田真澄だ。写真集の制作が一緒に撮影をするのは2回目だというふたりの間に流れるとりとめのない時間。本作は、答えを必要としない柔らかい世界観に日々のさりげなさを実感しては、忙しない心を優しく包み込んでくれるような写真集となっている。


 昨年の6月で30歳の誕生日を迎えた夏帆。このタイミングで写真集を出そうと思ったのはなぜなのか。また、撮影をともにした石田真澄との関係性はどう変化していったのか。2年間の記憶を紐解こうと質問を投げかけると、本作に並ぶ写真を見つめながら、愛おしそうに答えてくれた。(とり)

【インタビューの最後に、夏帆さんのサイン入りチェキプレゼントあり】

写真家・石田真澄との関係値

――真澄さんとの出会いは、フードカルチャー誌『RiCE.press』での撮影がはじまりだったんですよね。

夏帆:はい。その撮影がとても印象的だったんです。距離感が近すぎず、かと言って遠すぎでもなくて。フラットにそこにいてくれるから、撮られる側の私も身構えることなく、自然な状態でカメラと向き合えた感覚があったんです。いつもなら感じる、お仕事で写真を撮られることに対する苦手意識も、真澄ちゃんとなら関係ない。そう思える心地良さがあったし、何より楽しかった。それに、真澄ちゃんの撮る写真の雰囲気も好きだったので、今回、真澄ちゃんにオファーを出させていただいたんですよね。

――というと、2回目の撮影が本作だったと?

夏帆:そうです。しかも「2年間撮りためた写真を作品にしたい」と伝えたので、真澄ちゃんも戸惑ったと思います(笑)。

――2年間というだけで、かなり濃密な撮影になることは間違いないですからね(笑)。撮影中、真澄さんとの距離がグッと縮まるような出来事は何かありました?

夏帆:うーん、どうだろう。確かに最初のうちは距離感があったものの、何となくのイメージからはじまった撮影でしたし、他愛のない話をしながら、都度、作品の方向性を話し合ううちに、徐々に距離感も縮まっていったんだと思います。決定的なタイミングがあったというよりは、気付いたら、いろんな話ができるようになっていた感じです。そういう意味で本作は、私の写真集でありながら、真澄ちゃんの作品集でもあって。そこに写っているのは、“二人の時間”なんですよね。

――“二人の時間”ですか。そもそもは、2年間の日常を切り取った写真集にしたくて真澄さんにお願いしたのか、それとも真澄さんと作品作りがしたくて、結果として日常的な写真集になったのか、どちらなんでしょう?

夏帆:一応、前者ですね。今回、初めてコンセプトを考える段階から写真集制作に携わらせていただいて。どういう作品にしようか考えたときに、作られた世界観じゃなく、自分の目の前にある日常の延長線上で作品作りができたらいいなと思ったんです。

 真澄ちゃんの写真って、見ていてキュンとするんですよね。光を繊細に捉えて、その場の空気感や息遣いをありありと写してくれるから、例えそこに自分がいなかったとしても、不思議と懐かしさが感じられる気がするんです。20代の頃の私が何を感じていたか。真澄ちゃんだったら、そんな内面部分や、日常の中にある揺らぎだったり煌めきを魅力的に切り取ってくださるんじゃないかなって。


――絶大なる信頼を寄せられていたんですね。タイトル「おとととい」もまた、真澄さんが幼少期の頃に使われていた「一昨々日(さきおととい/一昨日の前の日)」を意味する言葉なんですよね。

夏帆:そうです! 響きがかわいいですよね。

――なぜこのタイトルに?

夏帆:最後の最後までタイトルが決まらなくて、編集の方と真澄ちゃんの3人で話し合いをしていたとき、ふと、編集の方が、真澄ちゃんが一昨々日のことを「おとととい」と言っていたのがかわいいと思ったって話をしてくださったんです。本作自体、時間の積み重ねによってできた写真集ですし、時間を言い表すにしても「おとととい」は他にはない言葉じゃないですか。あまり気取ったタイトルにはしたくなかったので、このどこか抜けている感じがちょうど良いなぁと。

――2年間も撮影をしていると、ベストなタイトルも見つかりづらいですよね。「日常」とか「ダイアリー」とかはそのまま過ぎますし。

夏帆:そうなんですよね。しっくり来るのが見つかるんだなって、「おとととい」に決まったときは、ちょっぴり感動しました(笑)。ここまでゼロの状態からモノづくりに関わったのも初めてでしたし、本が好きなので、一冊の本が出来上がるまでの工程をリアルに体感できて、悩んだ時間も含めて楽しかったです。撮影期間はもちろん、撮影後の写真のセレクトも、構成決めの作業も、全て参加させていただけたのが嬉しくて。真澄ちゃんがいて、編集の方やデザイナーさんがいて、みんなの化学反応によって完成した一冊。今振り返っても、この写真集作りは、贅沢でとてもワクワクする時間だったなと思います。

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