【漫画】インドともタイとも違う「スリランカカレー」そのお味は? 旅行漫画のカレーがめちゃくちゃ美味しそう
ーー二宮さんの人となりが伝わってくる作品だと感じました。スリランカを訪れた経緯について教えてください。
二宮ひかる(以下、二宮):理由のひとつは友人がスリランカにいたからです。ただ当時の私は社会人になったばかりで、忙しさから押し流されるような日々を過ごしていたことも大きく影響していると思います。そんな日々から違う世界に行きたいという思いがあったように感じますね。
ーー大変さもありつつ、異国の地を楽しんでいる様子を感じました。
二宮:大変だったことほど、時間が経つと面白い話として記憶に残りますよね。本作は美化された思い出として描かれている部分が多いと思います。あまりにも強烈なエピソードであるため、漫画のなかには描けないものもありました。
ーーよろしければお聞きしたいです。
二宮:本作ではドライブインで食事をするシーンがありますが、その室内はハエだらけで……。食べ物にハエが止まっていても気にせず食べる様子に驚いていると、お友達から「スリランカの食べ物が辛いのは、虫よけの効果を狙っているからなんだよ」と教えてもらったんです。
スリランカに来てから食べ物の辛さにヒーヒー言っていましたが、お友達の話を聞いてからは「辛くないと怖い」と思うようにもなりましたね。
ーースリランカでの旅を終えて、なにか変化はありましたか。
二宮:スリランカに移住したSF作家「アーサー・C・クラーク」の書いた小説の面白さが10倍以上に膨れ上がりました。旅の最中もそうですが、旅が終わり、スリランカでの日々を振り返るなかで旅の面白さを感じましたね。帰国後、私がスリランカのことをたくさん話したため、妹は新婚旅行でスリランカを訪れました。
ーーお友達の存在が旅のきっかけとなったように、妹さんにとって二宮さんの存在はスリランカへ行くきっかけになったのかと思います。
二宮:観光などを目当てとした目的のある旅、あるいは目的のない旅も面白いと思いますが、人に会いに行く旅も面白くて。誰かに会いに行く、そのために旅をする。そんな旅もぜひみなさんにやってほしいと思っています。
ーー冒頭の台詞“初めて旅した外国はその人となりを象徴するという”が印象に残っています。この台詞に込めた思いを教えてください。
二宮:「あなたのことを聞かせて」という思いです。いきなり「話を聞きたい」と言っても、相手にとってそれはむずかしいことですよね。「私はこうだったんだよ」となるべく面白く伝えることができれば、「私もね……」っていう言葉を引き出すことができると感じて。
本作は“旅の勧め”として描いたわけではないんです。私が初めて訪れた外国はこんなところだったとか、こんなことがあったんだよとか、みんなと会話したくて本作を描きました。言うなれば“旅話の勧め”みたいな感じです。
ーー漫画作品を通じてコミュニケーションを取ることが目的だったんですね。
二宮:会話だけで誰かに何かを伝えることに自信がないんです。私は言葉を重ねすぎてしまい、わかりにくくなってしまうので……。
漫画だとプロットや台詞まわし、ネームをつくり、何度も練っていく過程で無駄がそぎ落とされていくんです。そぎ落とされたところに的を射た表現がポコッとが入ってくれたりもしますし。自分にとって漫画という手法は、人に何かを伝えるための手段として適しているのだと感じます。
ーー1ページを描くために何度も練る必要があるからこそ、漫画を描くことは大変な作業だと感じます。
二宮:ちまちまと絵を描いていると、まるで写経をしているかのような気分になることがあります。もしくはサウナに入っているときのような、頭のなかが無になると言いますか……。大変ではありますが、ずっと苦行だという感覚ではないですね。
ーー本作を創作したきっかけを教えてください。
二宮:この作品は色々な漫画家さんの作品をまとめた同人誌に掲載するため、2021年7月に描いた漫画です。同人誌のテーマは“食べること”であり、私はスリランカでの思い出について描きました。同人誌をつくるプロジェクトに参加した人たちの作品が好きなものばかりで、この機会は逃せないと思い参加させていただきましたね。
ーー二宮さんは商業作家としても活躍されているかと思います。同人活動として漫画を描くなかで、商業的な活動との違いはありましたか。
二宮:大きな違いはありませんでした。ただ商業誌での活動と明確に異なるのは、本作を含む同人活動は1人で描いたこと、それだけだと思います。商業誌で描いていたころは背景をアシスタントさんに頼っていたので。自分も背景を修行しようという思いを抱きながら、本作は1人で描きましたね。