いつでも「楽しい」を目指してーー永尾まりやの新作写真集『ヤバイ!まりや。』に滲む人生観

楽しそうな生き姿

 前半にて、本作に登場する昭和を生きる女性の半生を妄想してみたが、その姿は、どこかリアルな永尾まりやの生き方と重なる部分がある気がする。AKB48を卒業してもうすぐ6年。現役時代、総選挙の最高順位は35位と選抜常連メンバーではなかったが、ファッション誌でモデル活動を行ったり、映画に出演したりと多彩に活動していた。卒業後は、さらにグラビア人気に火がつき、雑誌で単独表紙を飾ることもしばしば。本作が4冊目の写真集になることからも、その活躍ぶりが窺えるだろう。

 客観的に、ここ最近の永尾まりやは、いつも自然体で楽しそうな印象があった。SNSやモデルの蓼沼楓とともに開設したYouTubeチャンネル「まりかえちゃんねる」、また雑誌のグラビアで見かけるたびに、そう感じていたのだ。思い返せば、約3年前に発売された3作目の写真集『JOSHUA』(幻冬舎)では、アメリカ・カリフォルニア州サンディエゴまで訪れ、広大な自然のなか、ジョシュア・ツリーに縛られていた(”縛り”は永尾まりや自身の要望で実現したものであり、後日、写真集発売記念イベントではファンを縛ってチェキ撮影を行う特典もあったほどだ)が、本作で思いっきり昭和に振り切れたことも然り、自分を自由に表現できる写真集において、好奇心に委ねた挑戦できるのは、ただただ、それが楽しいからではないだろうか。

 人は理想を描きがちだ。その理想にとらわれるあまり、目の前の楽しさすら楽しみきれないこともある。しかし、自分が自分を楽しんでこそ世界が広がるのも確かだ。現に永尾まりやは、本作で生きたことのない昭和を生き、自身の表現を広げた。例え落ち着く先が、安アパートで暮らす独り身の女性だったとしても、寂しさと豊かさの狭間に揺れるスナックのママだったとしても、永尾まりやは、これからも自分が面白そうだと思う方向に舵を切って進んでいくだろうし、いつの人生も「楽しい」と形容するだろう。

 本作は、昭和の女性をモチーフにしつつも、永尾まりや自身の生き姿を反映した物語になっていると感じられた。それは、意図せずに自然と滲み出た彼女らしさかもしれないが、それでも、彼女だからこそ作り上げることのできた世界観であることは確かだ。

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