関ジャニ∞ 安田章大が届けた命のメッセージとは? 写真集『LIFE IS』で表現したリアルを振り返る

安田章大が届けた命のメッセージとは?

 NHK BS1の本格派ヒューマン・ドキュメンタリー『ザ・ヒューマン』の「揺るぎない息吹を 関ジャニ∞ 安田章大」が、2022年2月1日(火)17時より再放送される。2021年3月に本放送が行われた同プログラムは、2017年に脳腫瘍を患い摘出手術を受けた安田が「命」について考え、アイドルとして自分にはまだ届けられるメッセージがあるとして、今のリアルな姿を発信した記録だ。

 NHKの取材班は、遡ること2020年9月にマガジンハウスから発売された、気鋭の写真家・岡田敦による「安田章大写真集『LIFE IS』」の北海道ロケにも同行しているが、その模様を軸に、さまざまな活動がストップした新型コロナ禍という特殊な環境の中で発せられた安田の「声」を届ける内容となっている。なお同プログラムは昨年5月にも再放送されており、今回は2度目の再放送となる。

 この度の再放送を受け、あらためて写真集『LIFE IS』とは何だったのかを掘り起こし、安田の想いとそれを受け止めた岡田の表現について述べていきたい。

「命」のメッセージを伝える安田章大の覚悟

 『LIFE IS』の企画は、10年以上にわたり岡田の写真表現の世界観やメッセージ性に共感し、憧れの作家としてリスペクトしてきた安田が「命のことを表現したい」「闘病中の写真を入れたい」「アート本にしたい」と岡田に相談し具体化した。岡田は安田の想いを汲み取り、厚さ数センチにもなる企画書を作成。安田はそれを手に、所属事務所に直談判した。

 撮影は2020年の2月、厳冬期の北海道・根室で行われた。岡田が撮影の地を根室に選んだ大きな理由は「写真で命のことを表現する」ための背景として相応しいと考えたからだ。岡田は後遺症を抱える安田が生と死の狭間で光が射す方へ歩いて行くイメージを求めた。「キレイな物語として彼の経験をまとめるのではなく、儚くとも圧倒的に美しい世界の中に生きている、彼のいまの姿を写しとりたかった。そのためには、僕が知り得る限り最も美しく、命のことを感じられる場所で撮影する必要があった」と、以前の取材時に語っている。

 安田は後遺症の関係で、常に色のついた眼鏡をかけている。岡田は、安田の体調に配慮して森の中や昔の防空壕の中などできるだけ薄暗い場所や早朝の時間帯を選んで撮影に臨んだ。そうした中で安田は、どのロケーションでも自ら自然に眼鏡を外したという。色眼鏡をしていない安田の姿は、ファンにとって新鮮に映ったのではないだろうか。そして岡田は、演技ではなく自然に出す安田の表情や仕草を余すところなくカメラに収めた。

 『LIFE IS』は、「色彩」も大きな特徴の1つとなっている。カラー作品ではあるが、雪に覆われた厳冬期の根室で早朝や薄暗い場所をチョイスして撮影したカットは、どこかモノトーンな雰囲気を感じる。これも岡田の狙いだった。哲学者のエドマンド・バークは著書『崇高と美の観念の起源』の中で「多数の色彩の中でも柔らかい、もしくは華やいだ色彩は、(恐らく華やいだ色彩に属する強い赤色一つを除いて)、雄大な映像を生み出すのに不適切である」と述べているが、まさに安田の「命」や「生」のイメージを表現、言い換えれば崇高な荘厳さを表現するには、厳冬期の根室はもっとも岡田の構想にマッチしていたのだ。また安田が赤い林檎を両手に支えていたり、赤い羽織を纏っているカットなどは、そうした風景の中において命を感じる「強い赤色」としての演出でもある。

 これまでの大きな体験、過ぎ去るイメージを咀嚼し、禊ぎをするかのような安田の佇まいは、圧倒的な北海道の自然の中にあって、高い芸術性とより強いメッセージ性を纏った。

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