生田絵梨花はピュアさを失わない 卒業記念メモリアルブックに見た、旅立つ寂しさと覚悟

生田絵梨花『カノン』レビュー

 乃木坂46から生田絵梨花が居なくなってしまったなんて……。昨年末にグループを卒業してから、もうすぐで1ヶ月が経とうとしているのに、いまだにどこか実感を持ちきれていない自分がいる。

 ピュアな性格、清楚な佇まい、太陽のような存在感。何をもって”乃木坂らしさ”と言うか、そこに定義はないが、ザ・アイドルな弾ける楽曲もあれば、繊細なメロディに乗せて深みのある歌詞を聞かせる”響く楽曲”も多い乃木坂46において、生田絵梨花は、まさに乃木坂46・1期生のなかで最も”乃木坂らしい”人物だったと思う。ミュージカル女優として活躍しているだけあって、ユニゾンのなかでも彼女の声は、一際、耳に届きやすかった。それだけに、生田絵梨花のいない乃木坂46も、乃木坂46のメンバーでない生田絵梨花も、まだちょっぴり違和感が拭えない。

 しかし、卒業に先駆けて発売された『生田絵梨花 乃木坂46卒業記念メモリアルブック カノン』(講談社)を読み返していると、生田絵梨花は、どこに居ても生田絵梨花なんだと、不思議な安心感に包まれた。冠がどう変化しようと、活動の拠点がどこに移ろうと、彼女自身は変わらない。そう感じたとき、改めて、生田絵梨花の存在そのものが好きなんだということに気が付いた。

生田絵梨花は“パワーに満ちた人”

 本作は、2016年に発売された1st写真集『転調』(集英社)でもカメラマンを務めた細居幸次郎氏による、「卒業旅行」と「DEPARTURE(出発)」をテーマにした撮り下ろしや、デビューから卒業までの写真を並べたビジュアルヒストリー、「いく撮」(週刊誌)『FRIDAY』(講談社)で連載中の乃木坂46のメンバー同士が撮影しあったプライベート写真「乃木撮」の生田絵梨花ソロ版)などのほか、生田絵梨花のロングインタビュー、秋元真夏、齋藤飛鳥との対談、関係者、後輩たちが語る生田絵梨花の魅力、そして乃木坂46メンバーからのメッセージといった読み物までもが充実した内容となっている。

 全体を通して見えてきたのは、生田絵梨花の“エネルギッシュな愛され力”。才能に溢れながらも、たゆまぬ努力を続け、常に明るい笑顔でいる彼女の姿は、特に、身近な後輩たちからかなり慕われているようだ。しかしロングインタビューでは、乃木坂46に加入する前にドラマやミュージカルのオーディションに落ち続けた経験があり「自分はすごいとか、才能があるなんて思えない」、「私も悩みごとがあると、ネガティブ思考に陥ってなかなか抜け出せない」と自らを語るシーンもある。

 幼い頃からクラシックバレエやピアノを習い、10年間、アイドル人生を駆け抜けながら、ミュージカルの舞台にも立ち続けた。人一倍、他者の才能に触れる機会の多かった彼女からすれば、自分におごるなんてあり得ないだろうし、人知れず涙を飲む場面も多々あったはずだ。それでも、憧れのミュージカル女優として評価を受け、身近な人たちからも「アイドルもミュージカルも完璧に仕上げる真面目さ、ストイックさがすごい」と言わしめるほどの安定感を見せ、いつもファンに明るい笑顔を届けてくれたのが生田絵梨花だ。これまで彼女が見てきた景色を、ヨハン・パッヘルベルの「カノン」とともに想像してみると、彼女のピュアな感性までもが浮かび上がってくる。同時に、それら全ての経験が、舞台上での繊細な表現力に活きていると大変納得した。

 どこに居ても、どんなときでも、つい追いたくなってしまう表情。存在に触れるだけで、エネルギーが伝わってくる。“才能” という言葉を言い換えるとしたら、彼女の場合“パワー”となりそうだ。元気でも、ポジティブでもなく、“パワー”。パワーに溢れた人だからこそ、彼女の笑顔には信頼感と安心感があり、多くの人から愛されるのだろう。そのパワーは、生まれ持った素質に加えて、10年もの歳月をかけて彼女自身が積み上げた、大きな宝物だ。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「写真集」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる