手塚治虫、松本零士、筒井康隆、萩尾望都……まさに70年代SFマンガの豊穣! 『SFマンガ傑作選』が面白い
一方で、SFマンガの名作も、躊躇なく選ばれている。萩尾望都の「あそび玉」、諸星大二郎の「生物都市」、佐藤史生の「金星樹」、水木和佳子の「樹魔」は、名作中の名作だ。「金星樹」など、時間テーマのロマンチックSFとして、永遠に語り継いでいいと思うほどの逸品である。
その「金星樹」の次に、佐々木淳子の「リディアの住む時に…」がある。こちらも時間テーマなのだが、背筋がゾクッとする読み味は、佐藤作品とは別物。発表順に並べられているので偶然だろうが、SFマンガの多様性が伝わってくる、心憎い配置になっている。
そしてラストは、星野之宣の「残像」だ。星野は優れた短篇SFマンガが多数あり、編者も迷ったことだろう。私なら趣味に走って、『ブルーシティ』の前日譚「海の牙」を選んでしまうかもしれない。だが編者は、SFのアイデアと抒情性を巧みに組み合わせた「残像」にした。こうした節度ある姿勢で、ベストと呼ぶに相応しいSFマンガを見事に集めたのだ。作品の面白さは当然として、編者の手腕にも注目してほしい一冊なのである。