【漫画】ある女性教師が抱えた20年前の秘密 忘れられない記憶描いた作品に脚光集まる
ーーミステリ作品のような雰囲気、そして真里先生のあたたかな思いを感じる作品でした。創作のきっかけを教えてください。
もぐこん:本作は同人誌の即売会に参加するため、2014年に描いた作品です。2011年に東日本大震災がありましたが、本作を描いた当時には、周囲の人々から震災の記憶が急激に忘れ去られていく印象を覚えていました。自分は被災地から離れた場所に住んでいたからこそ、震災がなかったことになるような感覚を得ていたのかもしれません。
当時の自分が感じていた「忘れ去られていく」ことを漫画として表現したいと思い、本作を描きました。
ーー過去が忘れ去られていくことをどのように捉えていますか。
もぐこん:忘れ去られていくことは自然なことだと思いますが、個人のなかでは忘れることができないことがあると思っています。自分はそんな個人の思いっていいなと感じており、本作では真里先生の個人的な思いを描きました。
ーーある出来事を経験した真里さんを先生として描いた理由を教えてください。
もぐこん:数年前に描いた作品なので、あまり覚えていませんが……。学校に色々な経験をした先生がいたらうれしいなと考えていたのだと思います。中学生のときに好きだった先生がいて、アニメや小説など、自分の好きなことを話してくれた女性の方でした。女性の先生を作品で描くときには、その人をモデルにしています。
ーーその先生の姿は真里先生にも投影されているように感じます。
もぐこん:忘れがたい先生でした。自分は完全な空想を漫画で描くことができず、現実にあるものを登場人物などに当てはめて作品を描くことが多いです。先生役として登場するキャラクターには、自分の好きだった先生の姿を当てはめていますね。
また自分は小説家の保坂和志氏が好きで、彼が「現実にあるものを小説の題材にすると、モデルになったものをひどく書くことができず、物語もひどい話にもならない」というようなことを語っていた記憶があります。保坂氏の言葉を意識しながら自分は漫画を描いていますね。
ーー『10月29日』をはじめとするもぐこんさんの作品には、若者が多く登場する印象を受けています。
もぐこん:中高生は価値観や未来などが定まっていない、可能性を感じる存在だと感じています。自分は漫画を描くとき、最初にお話のオチを決めるのではなく、漫画を描きながら物語をつくることが多いです。定まっていないからこそどんな方向にも飛躍できる中高生は、描きながら変化していく漫画のお話に重ねることができるのです。
ーーもぐこんさんが漫画を描き続ける理由を教えてください。
もぐこん:なぜなのでしょう……。自分は描きたいことが湧いてくるとか、または何か伝えたいことがあるから漫画を描いているタイプではないのだと思います。
ただ、小学生のころには自分の描いた絵を見てもらえたり、褒められたりしていました。中学生になると絵を描けることが周りから評価されなくなりました。しかしインターネットが普及してホームページに自分の作品を公開すると、多くの人に見てもらえるようになりました。同人誌の即売会やSNSなどで、自分の作品に対する反応をもらえたことがうれしくて、人に喜んでもらえた体験が漫画を描いているきっかけや理由なのだと思います。
また最近は楳図かずお先生のような作品が少なくなっていると感じ、自分が楳図先生のような雰囲気の漫画を描くことで世に残したいという思いもありますね。
ーー今後の目標について教えてください。
もぐこん:たまに漫画雑誌で作品を掲載させてもらっていますが、別の仕事との兼ね合いから、今は週刊誌などで継続的に漫画を描くイメージができていません。しかし将来的には週刊誌や月刊誌などで連載することができたらうれしいです。
また自分はWeb媒体で作品を公表することが多いですが、紙媒体の本に憧れがあります。近い将来の目標として、紙の本として自分の作品を出したいですね。