菅田将暉主演で注目『ミステリと言う勿れ』の異質さとは? ミステリの常識を破る、独自の作風
ただ、SNSなどでは登場人物の境遇や、悩みを抱えた彼らに話した整の言葉に対する共感の声が多く挙がっている。多様な人物の心情が描かれる点や、事件に関係のない他者の内面に興味をもつ整の存在は、本作の魅力のひとつとして欠かすことのできない要素であるはずだ。
本作の作者である田村由美氏はインタビューにて、整が「僕は常々それを思ってるんですが……」と話し始める内容は、田村氏が常々思っていたり、ずっと長いこと考えてきてたりすることであると話している(参考:漫画『ミステリと言う勿れ』田村由美×永田裕紀子(後編)/実験的主人公・久能整の鋭い発言はどのように生まれているのか)。
読者と同じ時代で生きている田村氏の思考が物語に投影されているからこそ、本作の登場人物が抱く心情や、整が彼ら彼女らの悩みに寄り添う様子に、多くの人が共感を覚えるのだろう。
『ミステリと言う勿れ』はお話のなかで起きる事件だけをミステリとして扱うのではなく、その範囲を読者が過ごす日常に潜んだ、自分事としてとらえやすい事象まで拡張させた作品と言えるだろう。わたしたちが日々の中で感じる不満や不安もまた、整はまるでミステリだと言わんばかりに解きほぐしてくれる。