菅田将暉主演で注目『ミステリと言う勿れ』の異質さとは? ミステリの常識を破る、独自の作風

『ミステリと言う勿れ』は何がすごい?

 「このマンガがすごい! 2019 オンナ編」「マンガ大賞2019」では共に第2位に選ばれ、2021年9月には累計発行部数(電子版含む)が1000万部を突破した『ミステリと言う勿れ』。2022年1月には、菅田将暉が主演を務めるドラマの放映が予定されている。

 新人刑事「風呂光聖子」役を伊藤沙莉が、警部「青砥成昭」役を筒井道隆が務めるなど、続々とキャストが発表され作品への注目は高まるばかりだ。

 本作は大学生「久能整」の身の回りで起こる謎を解明していく物語であるが、ミステリ作品としてはかなり異質なものと言える。本稿ではミステリ作品として見た『ミステリと言う勿れ』の独自性について考察したい。

 物語の主人公である整は「episode2 【前編】会話する犯人」で自身が話すように、彼は探偵でもその助手でもない、ただの大学生だ。しかし人並外れた記憶力や観察力を武器に様々な謎を解明する。

 事件の謎を解く過程で、整は様々な境遇の人物が抱く悩みに興味を抱く。

 「episode1 容疑者は一人だけ」において、かわいがって育てたのに生意気な態度を示す娘の様子から、育て方を間違ったと話す「乙部克憲」巡査。彼に対し、整は父親と子どもが遺伝子レベルで警戒警報を出しているという一説、そして「乙部さんの育て方は間違ってない」「娘さんはちゃんと大人になろうとしている」という言葉を贈った。

 乙部巡査のほかに、目を離したスキにペットがなくなってしまい落ち込む風呂光巡査や奥さんとの関係に悩む「池本優人」巡査など、本作では物語のなかで登場人物の様々な心情が開示される。そんな彼らに整は小話をはさみながら、ときに優しい言葉を贈り、ときに鋭く指摘する。

 S・S・ヴァン・ダイン氏が提唱した推理小説の規則「ヴァン・ダインの二十則」では、「余計な情景描写や、脇道に逸れた文学的な饒舌は省くべきである」と推奨されている。本作において、娘の育て方を後悔する乙部巡査や、ペットとの別れに悲しみを覚える風呂光巡査の心情は事件には関係するものではない。そのため本作は「ヴァン・ダインの二十則」に反しており、ミステリ作品として異質なものだと言える(もっとも、近年はアニメ化された推理小説『氷菓』(角川文庫)をはじめとする日常ミステリや特殊設定ミステリなど、「ヴァン・ダインの二十則」から外れた作品は多いのだが)。



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