藤田直樹×林士平×細野修平「MILLION TAG」優勝記念インタビュー 「作家を育てる仕組みを発見できた」

「MILLION TAG」優勝記念インタビュー

作家を育てる仕組みを発見できたことが大きな収穫

【完結】全てを手に入れる優勝者がついに決定!! 1番面白い連載ネームを完成させたのはどのタッグ!?

――細野編集長にお聞きします。今回の企画を終えられて、全体としてどう評価していますか。

細野:本当にやってよかったです。今回は、優勝者を決めるために3カ月間で様々な課題を設けたのですが、これは番組の仕組みとして作ったものだったんです。締切に間に合わなければ脱落という厳しい条件の中、ライバルと競うのは大変なプレッシャーで、藤田さんをはじめ、参加された方々は大変だったと思います。この番組を今後も続けるかは別として、作家さんを成長させるためにすごくよくできた仕組みだと思いました。これは大きな発見でしたね。

――この番組は、作家さんだけじゃなく編集者さんたちも重要な登場人物となっています。参加された編集者さんたちに対してはどのように評価していますか。

細野:社内で電話したり打ち合わせしている姿などは普段から見ていますが、ここまで綿密な作家さんとのやり取りは、あまり見る機会がなかったので、シンプルに面白かったですね。こんな風にやり取りしてるんだなとか、的確アドバイスだなとか思って、みんなの真面目な仕事ぶりがわかってよかったです。

――番組を観ると、編集者がいかに漫画にとって大事かよくわかります。この番組には、作家だけでなく、編集者にもファンを作っていこうというような狙いもあったのでしょうか。

細野:どの編集者が付いているからと漫画を選ぶのはまだ一般的ではないと思います。作家さんの区別がついていない読者の方もいるぐらいですから。ただ、今後は個人の編集者が、かつての雑誌のようなブランド力を持つこともあるかもしれないですね。今回の企画を立てたのも、そういう流れに負けずに「少年ジャンプ+」のブランド力を向上しようということだったんです。林を含め、しっかりした編集者を我々は抱えていますよと見せたかったのはあります。

――選ばれた6組は、男性3、女性3でちょうど男女同数でしたが、これは意識してそうしたのですか。

細野:いえ、私は選考には関わっていないのですが、各編集者が組みたい作家を選んだ結果、自然とこうなりました。

林:僕らは作品を見て選んでいるので、別にプロフィールの性別で選んでいるわけではないです。個人的には、本当のジェンダーフリーは、作家については作品だけを見ることであって、その人の性別を考えないことこそ、本当のジェンダーフリーだと思います。

 今回の選考も、基本的に作品を読んで候補を決めて、面接して、きちんとコミュニケーションできる人かどうかや、これまでどんなものを描いてきたかとか、どんな作品が好きかなどを聞いて、各編集者が誰と組みたいかを選びました。

「少年ジャンプ+」でヒットを生み出す仕組みを作っていきたい

――本プロジェクトは賞金500万円と高額で、「少年ジャンプ+」での連載権と単行本化にアニメ化と副賞も豪華です。細野編集長は、今回の企画をやってよかったとのことですが、今後も続けていきたいという希望が持っていらっしゃるのですか。

細野:やりたいとは思っていますが、今のところは全くの白紙です。

――漫画アプリの傾向についてお聞きします。近年、その雑誌の看板作品を無料で公開されるケースがどこのアプリでも多くなってきました。例えば『ONE PIECE』の合計90巻分無料などですね。無料で公開というのはIT業界的な発想にも思えますが、こういう動きについてどうお考えですか。

細野:ネットよりもテレビに近い感覚ですね。テレビは無料でたくさんの人が観ていますし、多くの人の目に触れることでそれがパワーになり、そのパワーが次のお客さんと才能を呼び込み、結果として売上につながっていくのだと考えています。「少年ジャンプ+」のアプリダウンロード後の初回オリジナル作品無料というのも、そこから考えて生まれたものです。

――「少年ジャンプ+」は、これまでにも様々な意欲的な試みをされてきましたが、他社の漫画アプリも台頭してくる中、現在の漫画アプリを牽引していく存在として、今後の展望をお聞かせいただけますか。

細野:他のアプリを気にしていられる状況ではなく、今は「少年ジャンプ+」の中でいかにヒット作を多く作れるかに注力しています。『SPY×FAMILY』や『怪獣8号』、『ダンダダン』などデイリーで100万閲覧を超える作品が出てくるようになりましたが、次の目標は全ての曜日でデイリー100万閲覧を超える作品を作っていくことで、そこに向けて粛々とやっています。

 「週刊少年ジャンプ」には、次々とヒット作を生み出せる仕組みがあります。そういう仕組みを「少年ジャンプ+」でも作れるようにこれからも頑張っていきたいです。

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