「ポケカ」公認イラストレーターもお手上げ? 添削企画に寄せられた“上手すぎるイラスト”が話題に
アプリやウェブサービスの拡充により、漫画やイラストを発表する場が増えた現在。プロの道に一歩踏み出そうとしているクリエイターたちに指標を示しているのが、「ポケモンカード公認イラストレーター」としても活動するさいとうなおき氏のYouTubeチャンネルだ。
さいとう氏のチャンネルは2019年10月1日に誕生し、チャンネル登録者数は現在、51.2万人に及ぶ。その人気コンテンツとなっているのが、視聴者から寄せられたイラストに対して、上達のためのアドバイスを送る「気まぐれ添削」。普段は自身の経験も交えながら、細やかで的確な添削を行うが、7月27日に投稿された最新動画が、珍しく「この絵は添削できません!」と絶賛する内容になっている。
今回のイラストを応募したのは、アメリカ出身で10代のtofumangさん。女性VTuberグループ「ホロライブ」の人気メンバー、がうる・ぐらをモデルにしており、「落としたアイスクリーム」というタイトルと合わせて味わい深いイラストになっている。アイスクリームを見下ろす構図で、涙の粒で表現されている遠近感や、可愛らしさを強調するためにあえて重力の影響を排除した髪の毛など、こだわりが詰まっているが、本人はさらに実力を向上するためにアドバイスを受けたいという。
さいとう氏は冒頭から、「タイトルの付け方というか、コンセプトが最高」と絶賛。一見して、悲しみの表情と大粒の涙に胸が締め付けられるが、タイトルを見ると自分が「アイス」の視点だということに気がつき、微笑ましい気持ちになる。そして、その状況の切なさまで描き切る、tofumangさんの画力の高さに、さいとう氏は脱帽していた。
また、このイラストのポイントは、「二次元と三次元の描き分け」にあるとさいとう氏。落としたアイスクリームを見下ろす、という構図であれば、tofumangさん本人も悩みの一つに挙げているように、三次元的にリアリティを追求するなら、髪の毛は重力の影響を受け、「サイドヘアーは根元から下に垂れ下がってくるはず」(さいとう氏)。しかし、「そうすると違和感が出ると思う」と、さいとう氏が実際にイラストを調整してみると、確かにやや乱れた印象になり、モデルの可愛らしさが後退してしまうようだ。
同様の例として、つり目のキャラクターを下から見ると、本来は目尻が下がって見えるはずだが、そうするとイメージが大きく変わってしまい、「物理的にはおかしくても、二次元的な印象を優先して、あえてつり目のまま描く、ということがある」(さいとう氏)という。こうした感覚は、漫画的表現に慣れ親しんだ日本人は理解しやすいが、今回の応募者のように海外出身者はリアリティを重視しがちだと、さいとう氏は考えていたが、「その違和感を敏感に察知している」と、考えをあらためたようだ。
また、今回のイラストには、下層のレイヤーに「ポーズ人形」(リアルな人間の頭身でポーズを取らせ、構図の参考にするもの)が残っており、その使い方も高く評価された。ポーズ人形を使うと、どうしても頭身が人形に引っ張られ、キャラのイメージにそぐわない見た目になってしまいがちだというが、tofumangさんはあくまで角度や構図、陰影の参考にとどめており、これも「三次元的表現と、二次元的表現」のバランスがうまく取れた例として考えられるようだ。