一見上手な漫画もプロの手にかかると……元少年漫画誌の連載作家による添削動画に唸らされる

 雑誌や単行本だけでなく、各種アプリやウェブサービスの充実で、かつてより多くの「漫画」が楽しめるようになった現在。漫画家として活動するクリエイターも増えているが、その数だけ悩みもある。そんななか、YouTubeチャンネルで極めて丁寧な添削を行い、プロを目指すクリエイターたちの信頼を得ているのが、元週刊少年漫画誌の連載作家であるペガサスハイド氏だ。

 視聴者から寄せられた漫画やイラストに対して、プロならではの視点で問題点・改善点をわかりやすく指摘し、100万再生を超える動画も送り出しているペガサスハイド氏。素人から見れば「上手」な作品がほとんどで、みるみるプロクオリティの作品に仕上げていく様子が面白い。プロがどんなところに気を配り、技術や意識の違いで作品の仕上がりにどんな差が生じるのか、仕事の細やかさを知ることができる。

 添削する漫画は、ファンタジー&バトル漫画からリアルなエッセイ漫画まで作風もさまざま。7月11日に公開された最新の動画「#19 一見上手な漫画もプロが見れば…? 恐竜変身少女の漫画の原稿添削」では、恐竜のぬいぐるみが少女に変身するコメディ作品の添削が行われている。

#19 一見上手な漫画もプロが見れば…? 恐竜変身少女の漫画の原稿添削

 ペガサスハイド氏は、相手のために言うべきことはズバズバと指摘するが、どんな作品でもそれぞれの長所や個性にフォーカスし、それを伸ばそうとする優しい視点があるのも魅力だ。今回の作品に対しても、「明るくて元気がいいから楽しく読める」「コロコロコミックやボンボンなど、幼年漫画のノリを感じる」「こういう楽しげな雰囲気の漫画を描ける人は、意外に少ない」と評価していく。若い作家はどうしても、暗く刺激的なテーマに惹かれがちな傾向があるが、雑誌等でのデビューを想定した場合には活躍の場が限定されることもあり、「明るい漫画が描けること」は意外に大きなアドバンテージになるという。

 また、恐竜のぬいぐるみが変身した少女「ティラのん」ちゃんについても、かわいらしくネーミングも印象的で、独特のヘアスタイルや尻尾が生えているところ、ギャップのあるセクシーな衣装まで、「アニメになったときにコスプレイヤーが真似しやすそうなキャラクター」だと評価している。コマ割りや効果の入れ方も「うまい」としており、ベタ褒めと言っていい内容だが、果たしてどこに改善点があるのか。

 ここからペガサスハイド氏は、ネームを描き直していく。早送りで、ラフに描き直されていくなかで、早くもその違いに驚かされる。まず指摘されたのは、「コマ運び」について。「読者の目をいかに誘導するか」がポイントとなり、スムーズに、時系列順に誰もが迷わず読み進めることができるか、ということを考える必要があるという。

 また、そもそも右から左、上から下へ、という読み方が自然とできるのは、文章の「縦書き」という文化がある日本人だから、という解説も。その上で、違和感なく読み進めることができるように、元の漫画のコマを統合するなど再編集し、キャラクターもより際立たせる内容に変化させている。

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