『ブルーピリオド』と『バクマン。』の決定的な違いとは? 主人公たちのスタンスを考察
日本一受験倍率が高いと言われる東京藝術大学を目指す高校生「矢口八虎」の奮闘を描いた漫画『ブルーピリオド』。アニメ化、そしてYOASOBIやブルボン「アルフォートミニチョコレート」とコラボレーションしたCMが放映されるなど、様々なメディアミックス化から注目度の高さがうかがえる作品だ。
本作と同様に「人気漫画家を目指す」という芸術分野での奮闘を描き、アニメ化された作品として『バクマン。』が挙げられる。はじめて『ブルーピリオド』を読んだとき、わたしが抱いた印象は『バクマン。』を読んだときに感じたものと重なった。
ふたつの作品から似かよう雰囲気を感じたのは、作中で登場する「専門用語」の存在が理由として考えられる。『バクマン。』では漫画の設計図である「ネーム」や執筆時に用いる「Gペン」「スクリーントーン」といった画材など、漫画を描く人にはなじみの深い言葉が多く登場する。『ブルーピリオド』でも「スクラップブック」や「石膏像」など美術の授業で扱われるような言葉が登場し、影の描き方や構図のパターン、色相環や遠近法についても詳細に描かれる。
漫画をつくる手順や画材について知ることができる『バクマン。』と同じく、『ブルーピリオド』を読むことでデッサンや油絵などで用いる画材やテクニックなど、絵を描くことに関する知識を深めることができる点は共通しているだろう。
また、主人公の価値観や心情もよく似ている。『バクマン。』の主人公「真城最高」は物語の序盤で漫画家を目指すことに否定的であり、「より良い高校 大学 会社へ進むのが普通」「つまらない未来 生きている事は面倒くさい」と心の中で思っていた。
『ブルーピリオド』に登場する八虎は勉強ができて友人も多く、クラスメイトから一目置かれる人物だ。しかしテストで点を増やすことや人付き合いを円満にする日々のなかで「みんなが俺をほめるたびに虚しくなる」「この手ごたえのなさはなんなんだ」と嘆いている。真城も八虎も、日々のなかで満たされない感情を抱きながら学校生活を過ごす様子が描かれるのである。
その一方でふたりとも自身の夢や進路に対し、親から反対されてしまう。退屈な日々に対する虚しさ、そして若者が夢に向かう際に必要な「親の理解を得ること」をリアルに描いたからこそ、どちらの作品も若い読者層から大きな共感や支持を得たのだと考えられる。