『86』『ヴィヴィ』『ユア・フォルマ』……ラノベ界で“AI”テーマの良作続々
AIの可能性については、『Re:ゼロから始める異世界生活』の長月達平と、脚本家の梅原英司が企画したテレビアニメ『Vivy ‐Flourite Eye's Song‐』の原案小説で、同ランキング36位に入った『Vivy prototype2』にも描かれている。100年後にAIが人類を抹殺する未来を変えようと、時間を遡って送り込まれたエージェントの指示で、歌姫として作られたAIロボットのヴィヴィが、歴史改変に挑むという展開。AIと人間に差はあるのか、といった問いが投げかけられる。
37位の菊石まれほ『ユア・フォルマII 電索官エチカと女王の三つ子』は、第27回電撃小説大賞で《大賞》を獲得したシリーズの第2弾。
こちらでは、AIによる殺人という起こりえない事態を元に、機械と人間の絶対的な違いと、それを埋めようと足掻く少女の姿が描かれる。こうしたテーマは、ロボット三原則を作ったSF作家のアイザック・アシモフによる『鋼鉄都市』の頃から定番だが、AIが身近になって来た今、改めて気になっている人が多いことが、エンターテインメントのカテゴリーに現れ始めているのかもしれない。
ランキングの1位は、累計2600万部と世界的に大人気の川原礫『ソードアート・オンライン』シリーズの入り口に当たる「アインクラッド編」を、詳細に描いていくエピソードの最新刊『ソードアート・オンライン プログレッシブ8』。秋にアニメ映画『劇場版 ソードアート・オンライン -プログレッシブ―星なき夜のアリア』の公開も控えていて、これから盛り上がっていきそう。2位は継母や義妹に虐げられていた薄幸の少女が、嫁候補をことごとく追い出す軍人の家に嫁ぎ、幸せを見つけようとする顎木あくみのシリーズ最新刊『わたしの幸せな結婚5』が、7月20日の発売を控えランクインした。
■タニグチリウイチ
愛知県生まれ、書評家・ライター。ライトノベルを中心に『SFマガジン』『ミステリマガジン』で書評を執筆、本の雑誌社『おすすめ文庫王国』でもライトノベルのベスト10を紹介。文庫解説では越谷オサム『いとみち』3部作をすべて担当。小学館の『漫画家本』シリーズに細野不二彦、一ノ関圭、小山ゆうらの作品評を執筆。2019年3月まで勤務していた新聞社ではアニメやゲームの記事を良く手がけ、退職後もアニメや映画の監督インタビュー、エンタメ系イベントのリポートなどを各所に執筆。