【マンガ試し読みあり】ある日突然、殺害事件の容疑者になってしまったら? 『ロスト・ラッド・ロンドン』著者インタビュー

【漫画】『LLL』著者シマ・シンヤは何者?

現実をベースにして描くことの“責任”

ーーイギリスにいる間に、シマさんご自身が人種差別を受けたとか、周囲を見ていて感じたことなども作品に投影されていますか?

シマ:それはあるでしょうね。人種差別がないっていうのは、全世界どこでもありえないことなので。私も日系人、アジア人だってことで何か言われたり。特にアジア人の女性はそれだけで性的に見られることが多く、嫌な話は色々聞きました。ロンドン出身の黒人の友達は、今ではだいぶマシになってきてるけど、親の世代には、窓にレンガが飛んできて帰れって言われたとも話してくれました。彼も彼の親もイギリスで生まれたんですけどね。そういう見たもの聞いたものも、ある程度キャラクターに反映されていると思います。もちろん作品はフィクションだし想像だけど、一応、現実がベースにあります。

ーーシマさんの筆がのったシーンや、逆に描くのが辛かったシーンはありますか。

シマ:もうすべてが辛いんですけど、一生懸命「納期!納期!」って言いながら描いてます(笑)。

ーーキャラクターやストーリーを楽しむ余裕はなく、描き上げなきゃっていう気持ちで描いている?

シマ:単行本にするための作業で、一気に読んで確認しなきゃいけないときに、「こういう話だったんだーへええ」って感じで読みました。描いてる時はフィクションを書いているんだけど、現実に根ざしているので「責任をとる!」っていう感じです。

ーー責任ですか。

シマ:日本ではイギリスが舞台って聞いたら白人の話をイメージする方が多いと思うので、実際はそれだけじゃないぞっていうのを紹介する意味でも、こういうキャラ設定になっています。自分も有色人種ではあるけど、違う属性の人が受ける扱いみたいなものも描いていて、つまり当事者性がないものを書いている。だから、当事者が搾取されていると感じないようにしなければいけないっていう思いが強くあります。

ーー現実に根差しているからこそ、気をつけないといけない描写なども多そうですね。

シマ:はい。でも、人種差別とか社会問題がそこに存在しているから無視はしないっていう描き方になってはいるんですけど、それが中心の話ではない。もしそうしてしまうと、その人の人生は苦しみだけだっていうことになってしまって、それはそれで失礼なので。ゆるく物語を楽しんで、そこからイギリスだけじゃなくて、日本国内で起こっていることとか、いろんなことに目を向ける、考えるちょっとしたきっかけになればいいかなと思っております。

ーーサスペンスとしてもハラハラと楽しめる作品なので、もっともっと多くの方に読んでいただきたいですね。シマさんはすでに次の連載が決まっているとか(7月12日発売「月刊コミックビーム」8月号より新連載『グリッチ』開始)。次なる目標は新連載ですね。

シマ:はい、6月に『ロスト・ラッド・ロンドン』3巻が発売して、7月には新連載がスタートします。あと、近く「ウルトラジャンプ」でも読切を発表させていただく予定です。どれもこれも、無事にいつか終わって欲しいっていうところですね(笑)。

■書誌情報
『ロスト・ラッド・ロンドン』3巻(ビームコミックス)
著者:シマ・シンヤ
出版社:KADOKAWA
発売日:2021年6月11日

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