星一徹、磯野波平、海原雄山、さくらひろし……漫画キャラの父親たちが見せた“深い愛情”を検証
海原雄山『美味しんぼ』
山岡士郎の父、海原雄山。妻に対する振る舞いを見た息子が憤りを持ち、自らの美術品を壊されたうえ家出してしまい、縁を切るという、かなり悲劇的な親子関係を構築してしまった父親である。
常々「縁もゆかりもない」と言い放ち、息子を罵倒することも多かった雄山は「嫌な父親」の代表格ともいえる。しかし、実は士郎が幼少期に使っていた茶碗を手作りする、嫌いな食材を克服するメニューを考えるなど愛情を注いでいた。
また、『究極対至高』の対決ではぶつかり合いながら士郎を鍛えており、対決に負けたにもかかわらず、息子の成長に満足しているような素振りを見せることもあった。結局、雄山の心の奥底に潜む優しさに気がついた士郎の嫁・ゆう子の尽力で、2人は仲直りすることになる。長い年月を要したが、息子への愛情が実ったのだ。ただの暴君なら、こうはいかなかったであろう。
さくらひろし『ちびまる子ちゃん』
酒に酔っていることが多くつねにグータラで、その発言がまる子や妻・すみれから呆れられてしまうことも多いさくらひろし。また、まる子や自らの父である友蔵に嫌味を言うこともあり、「嫌な父親」と感じる人もいると聞く。
しかし、ひろしの家族愛には深いものがある。13巻で自動車を買った際には、まる子を連れ中華街につれていくという優しさを見せている。お母さんとまる子が仲良くしていると、寂しそうな表情をしていることもしばしばだ。
グータラで酒ばかり飲んでいるイメージのあるひろしだが、母・すみれや姉・さきこ、まる子に嫌味を言うことはあっても、暴力を振るうような描写はない。その辺りにも、ひろしの優しさが垣間見えていた。
時代の経過とともに父親像にも変化が
父親のあり方は様々だが、「子を思う気持ち」は共通している。時代の変化とともに、愛情表現の方法が変わってきているのだろう。