『セスタス』シリーズが読者を熱くさせる理由ーーひたむきな姿に見る、“格差社会”を生き抜く術

『セスタス』シリーズが読者を熱くさせる理由

 ちなみにこの「セスタスシリーズ」、主人公のセスタスのほかに、彼とほぼ同格といっていいような主役級のキャラクターがふたり登場する。ひとりは先に述べた若き皇帝ネロであり、もうひとりは、セスタスの終生のライバルとなる総合格闘術の天才にして皇帝を護る衛士のルスカだ。

 一見、立ち場も個性もバラバラなこの3人だが、実は、「本来は血なまぐさい世界の似合わない心優しい少年である」ということと、「運命的な何かに縛られている(不自由である)」という点では共通している。それゆえに3人は惹かれ合い、身分を越えた友情を築きつつさえあったが、そこでもまたある種の見えない「壁」が立ちはだかるのだった……。

 いずれにせよ、今回のアニメ化で、この圧倒的におもしろいエンターテインメント作品の読者はさらに増加することだろう。セスタス、ルスカ、そしてネロ。この3人がいかにしてそれぞれの「壁」に立ち向かっていくのか、いまから目が離せない。

■島田一志
1969年生まれ。ライター、編集者。『九龍』元編集長。近年では小学館の『漫画家本』シリーズを企画。著書・共著に『ワルの漫画術』『漫画家、映画を語る。』『マンガの現在地!』などがある。Twitter

■書籍情報
『拳闘暗黒伝セスタス(1)』
技来静也 著
定価:本体600円+税
出版社:白泉社

『拳奴死闘伝セスタス(1)』
技来静也 著
定価:本体600円+税
出版社:白泉社

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