『バクマン。』に時代が追いついた? 『鬼滅の刃』『呪術廻戦』『チェンソーマン』が描く”邪道の王道”

『バクマン。』に時代が追いついた?

 『バクマン。』(集英社)は“ジャンプを事細かく描くジャンプ作品”として、大きな話題を呼んだ漫画だ。累計発行部数は1500万部を超え、アニメ化や実写映画化まで果たした。そんな「週刊少年ジャンプ」を中心に漫画界の裏側をリアルに描いた『バクマン。』だが、作中には様々な作中作が存在する。そこには『鬼滅の刃』『呪術廻戦』『チェンソーマン』など、現代の名作へと通じる“人気漫画を生む秘訣”が隠されていた。

 『バクマン。』は2人の少年がコンビを組む漫画家・亜城木夢叶が、人気漫画家を目指し奮闘する姿を描いた作品である。この漫画のポイントは、主人公たちがジャンプで人気を獲得するには1番の近道である「王道バトル漫画」を描けない点だ。

 漫画家を目指し、原作と作画を分けるコンビを組んだ真城最高と高木秋人。しかし高木が提出する原作ストーリーは1作目の「ふたつの地球」からジャンプ作品の中では邪道と言われる物語だった。その後「ジャンプで人気を獲るにはやはり王道漫画だ」と考えた2人は、編集の反対を押し切り王道漫画を描く。しかしその漫画は全くの駄作。2人に王道漫画を描く才能はなく、その代わり亜城木夢叶はジャンプらしくないエグい邪道漫画を描く才能に恵まれていたのだ。

 その後2人は数々の読切り掲載や連載を経験する。探偵漫画、ギャグ漫画、完全犯罪漫画で連載するも、ジャンプで1位、2位を争う漫画を描けない2人。そのとき高木はジャンプで1位を取るには、やはり王道漫画で無ければと考えていた。しかし物語の最後、2人はジャンプの頂点に君臨する作品の制作に成功する。亜城木夢叶の完成形とまで言われたその作品のジャンルは、“邪道な王道バトル漫画”だった。

 亜城木夢叶が人気を確信し、実際に作中ではジャンプのトップとなった“邪道な王道バトル漫画”。ただ連載当時は、“邪道な王道”というジャンルがあまりピンと来なかった読者も多いだろう。作品終盤での天才漫画家・新妻エイジが描く最強の王道バトル漫画とのデッドヒートに、置いていかれてしまった人も少なくないように感じた。しかし実際に近年ジャンプで大きく名を売った作品には、『バクマン。』で人気漫画の決定版として描かれた“邪道な王道バトル漫画”が多く見受けられるのだ。

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