『呪術廻戦』『チェンソーマン』『怪獣8号』……いま、バトル漫画に求められるヒーロー像は? ランキングから考察

人気漫画から見る「求められる」ヒーロー像

 なお、今回のランキングに話を戻すと、5位・6位以外のランクイン作品3作の主人公にちょっとした共通点があるのにお気づきだろうか。そう――『呪術廻戦』、『チェンソーマン』(藤本タツキ)、『怪獣8号』(松本直也)のいずれもが、奇しくも「魔物の力を取り込んだ漢(おとこ)」の物語なのである(注)

注……厳密にいえば「魔物の力を取り込んだ」というニュアンスと少し違うためあえて外したが、6位の主人公にも「特級過呪怨霊」が憑いている。

 だからどうした、という話かもしれないが、いささか強引にまとめてしまえば、この種の主人公――すなわち、敵と同じ能力(ちから)を持った「毒をもって毒を制する」タイプのダークヒーローが、いまの時代には求められている、という見方もできなくはないだろう。少なくとも、昔ながらの勧善懲悪・清廉潔白な正義の味方よりは、虎杖悠仁やデンジや日比野カフカのような、魔性の存在の力を取り込みながらも「人の心」を失わなかった(そして、「仕事」として他者のために命をかけられる)漢たちのほうが、見えない不安に覆われた「いま」を生きる読者たちにとっては、「リアル」なヒーローだということかもしれない。

■島田一志……1969年生まれ。ライター、編集者。『九龍』元編集長。近年では小学館の『漫画家本』シリーズを企画。著書・共著に『ワルの漫画術』『漫画家、映画を語る。』『マンガの現在地!』などがある。https://twitter.com/kazzshi69

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