『鬼滅の刃』煉󠄁獄杏寿郎の魂は燃え尽きない 今なお読者を熱くさせる理由

『鬼滅の刃』煉󠄁獄杏寿郎の魂は燃え尽きない 今なお読者を熱くさせる理由

※本稿には『鬼滅の刃』の本編およびスピンオフ(『炭治郎の近況報告書』、『煉󠄁獄零話』)の内容について触れている箇所がございます。未読の方はご注意ください(筆者)

煉󠄁獄零話

 先ごろ発売された『鬼滅の刃 公式ファンブック 鬼殺隊見聞録・弐』(吾峠呼世晴・著)の内容が、ことのほか充実している。副読本の類(たぐ)いにはあまり食指が動かない、という漫画ファンも少なくないだろうが、本書については、(もし、原作を最後までおもしろく読んだというのなら)購入を検討してみてもいいかもしれない。

 というのは、同書には、吾峠呼世晴による「特別描き下ろし漫画」と「単行本未収録漫画」が7作ほど収録されているからだ(注・4コマ漫画などの短い作品も含む)。

 とりわけ注目すべきは、「特別描き下ろし漫画」のひとつである、『炭治郎の近況報告書』という短編だろう。ここでその内容を詳しく書くつもりはないが、同作では、原作の第204話(最終話の1話前)で、主人公の竈門炭治郎たちが懐かしい生家に還(かえ)った後の「近況」が、あたたかいタッチで綴られている。また、それだけでなく、鬼殺隊の仲間や柱たちの「その後」も描かれており、そういう意味ではこの短編は、いわゆる「外伝」というよりはむしろ、第204話と最終話をつなぐ、いわば「第204.5話」だと考えたほうがいいだろう。

 そしてもうひとつ、「単行本未収録漫画」の『煉󠄁獄零話』も見逃せない1作だ。こちらの作品は、以前、『週刊少年ジャンプ』2020年44号と、『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』の入場者特典(小冊子『煉󠄁獄零巻』)に掲載(収録)されたレアな短編だが、タイトルからもわかるように、主人公は鬼殺隊の「炎柱」――煉󠄁獄杏寿郎である。

※以下、ネタバレ注意

 ちなみに、『鬼滅の刃』の単行本の累計発行部数は、大ヒットした映画『無限列車編』公開直前の2020年10月2日の段階で、1億部を超えていた。となれば当然、この『煉󠄁獄零話』が執筆されていた時点でもすでに、煉󠄁獄杏寿郎と宿敵・猗窩座(上弦の参)の激闘の“結末”を、数え切れないほどの人々が知っていた、ということになる。それを承知のうえで、作者はあえて本作で、のちに「炎柱」となる漢(おとこ)の初々しい「初任務」の姿を描いた。その真意は何か。

 それはおそらく、剣士になりたての煉󠄁獄が、彼よりも先に逝ってしまった仲間たちの想いを背負い、肉体だけでなく心も逞しく成長していく姿を見せることで、『鬼滅の刃』のテーマのひとつである「継承」――すなわち、誰かの想いが誰かに受け継がれていくことの尊さを、あらためて広く世に知らしめたかった、ということではないだろうか。

 笛を吹いて相手の神経を狂わせる邪悪な鬼を斬った後で、煉󠄁獄杏寿郎は、彼の勝利に力を貸してくれた仲間たちの亡骸(なきがら)に向かってこう誓う。

君たちのような立派な人に
いつかきっと俺もなりたい

 この姿はどこか、何度強敵に痛めつけられようとも、「心を燃やせ」という彼の言葉を思い出して闘気を奮い起こす、竈門炭治郎のそれと重なりはしないだろうか。そう――人は誰かを守るためだからこそ、あるいは、誰かの想いを背負っているからこそ、強くなれるのである。

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