ディオ、カーズ、吉良吉影……『ジョジョの奇妙な冒険』ラスボスたちで最も腐った“悪”は?

『ジョジョ』各部のラスボスを徹底考察

 2011年の連載開始からもうすぐ10年ーー『ジョジョリオン』が、現在クライマックスを迎えている。「ウルトラジャンプ」2021年2月特大号の巻末コメントで、荒木飛呂彦自身が「『ジョジョリオン』も大詰めですよ。」と認めており、その盛り上がりの象徴となっているのが満を持してのラスボスの登場だ。

 『ジョジョリオン』を含め、第8部まで描かれている『ジョジョの奇妙な冒険』シリーズには、各部に宿敵、または黒幕とも言えるキャラクターが存在している。本記事では前編として、ジョースター家の血統と決戦を繰り広げた第1部から第4部までのラスボスを紹介していく。

ディオ・ブランドー(第1部『ファントムブラッド』)

 ジョースター一族の最大の宿敵。ゲロ以下のにおいがプンプンする、生まれついての悪。後継ぎとしてジョースター家の財産を乗っ取りにやってくる。ジョナサン・ジョースターの愛犬・ダニーを焼き殺し、友人を取り上げ、恋人・エリナのファーストキスも奪う。ディオの目的はジョナサンを孤独でカラッポにすること。「手段は問題ではないッ! キスをしたという結果があればいい!」というディオのセリフは、後に第5部で登場するディアボロをはじめとする、荒木作品における“悪”に通底した考え方である。

 ディオは「おれは人間をやめるぞ! ジョジョーーッ!!」と石仮面を利用し、人間を超越した吸血鬼に。「無駄 無駄ッ!」「貧弱! 貧弱ゥ!」「UREEYYY」とお馴染みのセリフを吐くようになる。屈指の名ゼリフ「おまえは今まで食ったパンの枚数をおぼえているのか?」は、人間の命を何とも思わずに喰らい続けてきたディオの精神を端的に例えた比喩表現だ。脳天に銃弾を受けても平気。火の海においても皮膚組織が次々と再生し、ジョナサンに剣で真っ二つにされてもずれた左半身と右半身をグイッと修復。波紋に対抗した「気化冷凍法」、高圧で体液を目からビームのように発射する「空裂眼刺驚(スペースリパー・スティンギーアイズ)」でジョナサンらを苦しめた。死闘の末、ディオは生首姿でジョナサンの身体を乗っ取ろうとするが、相打ちとなり、ディオを抱く形でジョナサンは絶命する。

 数奇な運命にあるジョナサンとディオ。一時はジョナサンを「猿」呼ばわりしていたディオも「おれたちはこの世においてふたりでひとり」とライバルに敬意を払い、ジョナサンも「奇妙な友情すら感じるよ」と宿敵であるディオを認めている。

 豪華客船の爆発で海底に沈んだディオは、100年後、ブ厚い鉄の箱から発見されることとなる。ジョースター家とディオの因縁は、第3部『スターダストクルセイダース』へと続くーー。

カーズ(第2部『戦闘潮流』)

 2000年の眠りから目覚めた種族「柱の男」のリーダー格で天才。石仮面を作り出し、吸血鬼を食料とする食物連鎖のトップ。ジョセフ・ジョースターが持つエイジャの赤石を手に入れ、完全生物「究極の生命体」になることを目的とする。

 同じ柱の男でも、誇り高き戦士のワムウや仲間のために生きたエシディシと比べ、カーズはワムウの意志すらも裏切る悪。「頂点に立つ者は常にひとり!」「最終的に勝てばよかろうなのだァァァァッ!!」と汗をかかず、危険を最小限に、バクチを避け、目的を達するのが至上であり、「真の戦闘」と考える。「畑にすてられカビがはえてハエもたからねーカボチャみてえにくさりきった」根性の持ち主である。

 隠し持っていた石仮面に赤石をはめ、カーズは「究極生命体(アルティメット・シイング)カーズ」へと進化。波紋も、太陽の光も克服をした不死身であり、不老不死。ナイフのようにうった硬質化した羽をピラニアに変形させるなど、その姿は創造主のようだ。溶岩に突っ込んでも泡状の第2のプロテクターを纏い、地球をも克服したカーズは最終的に波紋すらも打てるようになる。圧倒的悪の前に絶体絶命と思われたが、噴火する灼弾丸に押し上げられカーズは大気圏外へ。体内から空気を噴出し圧力抵抗で軌道を変え地球に戻ろうとするが凍結し、宇宙空間を彷徨い続けることに。かの有名な「そして死にたいと思っても死ねないのでーーそのうちカーズは考えるのをやめた。」である。

 なお、第7部にあたる『スティール・ボール・ラン』のマジェント・マジェントには、自身のスタンド「20th Century BOY」の能力によって、川底から身動きが取れなくなり、「待つ事と考える事をやめた」というカーズのパロディ的セリフがある。

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