『地獄楽』、アニメ化でブレイクなるか? バトルの中で愛を描いた傑作を読み解く

完結『地獄楽』が描いた“愛する”という強さ

 集英社の漫画雑誌アプリ「少年ジャンプ+」で配信されていた賀来ゆうじ『地獄楽』(集英社)が、1月25日の配信第127話で完結した。化け物たちが跋扈する島へ、監視役の打ち首執行人たちと共に送り込まれた極悪人たちが、無罪放免をかけて繰り広げたバトルの行方。幻かもしれない妻との再会だけを心の糧に、強敵に挑んだ主人公の画眉丸の運命。そんな関心がすべて満たされる結末は、テレビアニメ化決定という朗報も同時にもたらした。

 「愛があるから人は強くなれるのか? 信じるものがあるから苦しみを乗り越えていけるのか?」―2020年6月4日に第10巻が刊行された時に、『地獄楽』という物語に通っている心棒のようなものを、愛であり信頼ではないかと書いた。(参考:https://realsound.jp/book/2020/06/post-567330.html

 以後、最終回まで30話ほどにわたって描かれた、クライマックスに次ぐクライマックスといった激しいバトルの中で、そうした思いはより強くなっていった。最後に立っていた者たちが、まさに愛と信頼をより所にして強さを発揮し、苦しさを克服して、極楽でもあり地獄でもある孤島を後にできたからだ。

 そもそも、『地獄楽』とはどのような物語だったのか。“忍法浪漫”と銘打たれ、2018年から連載が始まった漫画で、主人公は“がらんの画眉丸”と呼ばれる男。忍者たちが作る石隠れの里の筆頭忍者として、暗殺などの裏仕事を冷酷にこなしてきた。

 そんな画眉丸の心境が、長老の娘の結を妻に迎えたことで変化した。結との「普通」の生活を願って里を抜けると言い出した。長老は表では認めたものの実は許さず、画眉丸を罠にはめて幕府に捕らえさせる。当然、死罪を言い渡されたものの、焼かれても刀で切られても死なない画眉丸を幕府は、ほかの死罪人たちとともに、南海に浮かぶある島へと送り込む。

 美しい花が咲き、蝶が舞う極楽浄土のようなその島の存在を知った幕府は、何度か調査団を送り込んだが、ほとんどが消息不明となり、戻ったひとりは全身から花を咲かせて人間性を失っていた。恐ろしい島だが、人を花に変えるなら、不老長寿の仙薬もあるかもしれないと考えた将軍は、命の惜しくない死罪人たちを、監視役の打ち首執行人たちと共に送り込んだ。無事に仙薬を持ち帰ったひとりだけを無罪放免にすると約束して。

 生き残れるのがたったひとりなら、当然起こるのが死罪人どうしでの殺し合いだが、『地獄楽』が有り体の孤島バトルロイヤルものと違っていたのは、島に圧倒的な強敵がいたということ。秦の始皇帝の命を受け、不老不死の仙薬を探して海を渡った徐福が生み出した「天仙」たちが、女にも男にも姿を変えられる美しい容姿で、人間を遙かに超える力を振るって攻撃してきた。

 とりわけ、蓮(リエン)という名のリーダー格の天仙は、本土にいる人間たちをすべて花に変えつつタオを集め、徐福を復活させようと目論んでいた。その思いが、単なる“生みの親”を慕うだけに留まらない、深くて激しいものだった理由が明かされたとき、蓮がどうして他の天仙たちに比べ、飛び抜けた強さを持っていたかも分かる。そして同時に、画眉丸がどれだけの強敵を前にしても屈せず、石隠れの里から送り込まれてきた暗殺者たちにも負けずに、最終決戦までたどり着けたかも理解できる。

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