『NARUTO』カカシ先生が教えてくれたことーー多くを失った人間の言葉の重み
どんな状況でも最後まで先生であり続けた
ナルト達第七班は、サスケが木の葉の里から抜けたことによりバラバラになってしまう。サスケはその後、暁と呼ばれる犯罪組織へと堕ち、木の葉への復讐を企てるようになるが、そんな闇に堕ちた教え子に対してもカカシ先生は「先生」としての立場を崩さない。
「どんなに落ちても、大蛇丸がかわいいと思えてたんだな。三代目火影様がどんな気持ちだったか・・・今になってわかるとはね」というカカシ先生は、自分の責任として復讐心に取り憑かれたサスケと対峙する。三代目火影がかつての教え子大蛇丸を止めようとしたように、カカシ先生もまた先生の責務としてサスケを止めようとしたのだ。
そして、カカシ先生は最終決戦の最後の瞬間まで第七班の先生であり続けた。ナルトとサスケが世界の命運を握る力を得ても、最後の作戦を立てたのはカカシ先生だった。忍界大戦最終局面で、第七班の3人が力を合わせてカグヤを封印したシーン、カカシ先生は「うん、いい画だ。今のお前らは⋯⋯大好きだ。」と言って教え子たちを慈しむ。このシーンは読者もカカシ先生と同じ目線で3人の成長を頼もしく感じただろう。
第七班結成から、最後の決戦までカカシ先生は見事にナルトたちを導く存在だった。自らも深く悩み、ふがいなさも自覚しながら進み続けるカカシ先生はナルトたちだけでなく、少年少女時代に本作を読んだ読者たちにとっても「人生の師」と呼べるような存在だったに違いない。
■杉本穂高
神奈川県厚木市のミニシアター「アミューあつぎ映画.comシネマ」の元支配人。ブログ:「Film Goes With Net」書いてます。他ハフィントン・ポストなどでも映画評を執筆中。
■書籍情報
『NARUTO』72巻完結
著者:岸本斉史
出版社:集英社
出版社公式サイト